滲出性と漏出性胸水の鑑別
胸水の原因 滲出性と漏出性胸水の違い
通常、胸水の元となる体液は壁側胸膜の毛細血管から胸腔内に入り、壁側胸膜にあるリンパ管から吸収されてバランスが保たれている。
しかし、肺実質の病変・低アルブミン、心不全などにより毛細血管透過性の亢進、静水圧の上昇、膠質浸透圧の低下が起こると壁側胸膜と臓側胸膜の間の空間に胸水がたまってしまう。
胸水は性状により炎症性の滲出性胸水と非炎症性の漏出性胸水に分かれる。
■滲出性胸水について
滲出性胸水は細菌感染、腫瘍、炎症、結核などによって胸膜が損傷し、毛細血管透過性亢進やリンパ液灌流低下により生じる。
代表的な原因:悪性腫瘍>結核>肺炎
その他、膠原病、膵炎、肺塞栓、外傷など鑑別は多岐にわたる
胸水の特徴:混濁している、細胞成分多い、繊維素多い
■漏出性胸水について
漏出性胸水は心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、低栄養などでみられ、静水圧亢進や膠質浸透圧低下で起こる。
代表的な原因:心不全、肝硬変、ネフローゼ、低アルブミン
胸水の特徴:透明な液、細胞成分少ない、繊維素少ない
★甲状腺機能低下症や肺塞栓症は漏出性と滲出性のどちらも取りうる。
◯胸水検査で何を提出するか
一般項目:タンパク、細胞数とその分画、pH、アルブミン、LDH、一般細菌の塗抹培養、結核菌塗抹培養、細胞診
追加項目:ADA、結核菌遺伝子検査、CEAなど
具体的な鑑別
滲出性胸水の鑑別にはライトの基準が用いられる。
1、胸水中タンパク/血清蛋白比>0.5以上
2、胸水LDH/血清LDH>0.6以上
3、胸水LDH/血清LDH正常上限値×2/3
このうち1つでも合致した場合は滲出性胸水である。(つまり胸水が”濃い”状態)
感度100%、特異度80%と言われており、滲出性胸水の除外に有用。
→ライトの基準を1つも満たしていなければ漏出性胸水の可能性が非常に高い。
が、利尿剤をしようすると漏出性胸水は滲出性胸水と誤って判定されることが多いので解釈には注意する。そして胸水貯留していると利尿剤が使用されていることが多い。
◎漏出性胸水の鑑別
漏出性胸水は静水圧と浸透圧の不均衡から生じる胸水であり、原因としては心不全が圧倒的に多い。その他には肝硬変、ネフローゼ症候群、肺塞栓、悪性腫瘍、甲状腺機能低下症、無気肺、上大静脈閉塞症、卵巣過剰刺激症候群、メグズ症候群、腹膜透析など。
→通常利尿薬が効果的。
◎滲出性胸水の鑑別
・滲出性胸水は胸膜の炎症やリンパ液排出障害が原因で肺炎、結核、悪性腫瘍、膠原病などが代表的。
・まず胸水中の白血球に注目。好中球優位であれば細菌感染、膠原病、リンパ球優位であれば結核、悪性腫瘍の可能性が示唆される。
・胸水を採取したら血ガス装置でpHを測定。肺炎随伴性の胸水でpH7.2以下ならドレナージが必要。悪性胸水においてはpHは低ければ低いほど死亡率が高い。
・糖が60mg/dl以下もしくは血清の半分以下と低い場合は、結核性胸膜炎、膠原病、癌性胸膜炎、進行した肺炎随伴胸水も疑う。
・肺炎による胸水の場合であればグラム染色や培養により膿胸の診断が可能。
・結核の場合、培養も重要であるが、偽陰性になることもあるので疑ったらPCRで遺伝子検査をするべき。
・ADAはリンパ球優位の胸水の鑑別に有用。ADAが50μg/dl以上の時は結核を疑うが、リンパ腫などの悪性腫瘍やリウマチ、膿胸でもADAは高値なのでこれらの鑑別は必要。
・アミラーゼは軽度上昇であれば膵炎よりも食道破裂や悪性腫瘍を疑う。
・血性胸水があれば悪性腫瘍、肺塞栓、外傷など。
・乳び胸であれば悪性リンパ腫をはじめとする悪性腫瘍が多い。