つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

アドレナリンとノルアドレナリンの違い(修正加筆ver)

神経伝達物質は大別してアセチルコリン、アミノ酸、モノアミン、プリン誘導体、ペプチドに分けられる。モノアミンにはドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン、セロトニン、ヒスタミンがある。モノアミンのうち、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンはその化学構造の中にカテコール基をもつので、カテコールアミンと総称される。

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構造式としてもやや異なる↓

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ノルアドレナリンにメチル基が一つ加わったものがアドレナリンである。

 

 

 

■ノルアドレナリンとアドレナリンの産生および分泌部位について

 

ノルアドレナリンとアドレナリンは前述のとおり、カテコールアミンに属する活性物質である。中枢神経系ではノルアドレナリンを産生する神経細胞は延髄、橋、中脳に存在し、特に青斑核に密集している。そしてノルアドレナリンを大脳皮質、大脳辺縁系、視床下部、嗅球、小脳、脊髄と広範囲に投影(分泌)している。一方、アドレナリンを産生する神経細胞は延髄、橋に存在し、ノルアドレナリン同様に広範囲に分泌されている。

 

■α受容体とβ受容体とは

 

ノルアドレナリンとアドレナリンに対する受容体はまとめてアドレナリン受容体と呼ばれている。アドレナリン受容体はその存在部位や機能などからα1、α2、β1、β2、β3に分類される。

ノルアドレナリンはα1、α2受容体に同程度に作用し、β1受容体にも作用するが、β2受容体への作用は非常に弱い。アドレナリンはα、β作用ともに、ノルアドレナリンよりやや強く、全ての受容体に同程度作用する。

 

■α、β受容体の発現部位と主な機能

 

α1:血管平滑筋、尿生殖器の平滑筋、腸の平滑筋、心臓、肝臓

α1受容体は血管の筋収縮をするので血圧の上昇をもたらす。故にα1受容体拮抗薬は高血圧の治療として用いられる。また、尿生殖器の平滑筋の収縮も引き起こすのでα1拮抗薬は前立腺肥大症の治療としても用いられる。

 

α2:膵臓β細胞、血小板、神経、血管平滑筋

 α2受容体作動薬は中枢神経において作用し、交感神経の末梢への出力を減少させ、結果として交感神経終末におけるノルエピネフリン遊離が低下し、血管平滑筋収縮の減少を引き起こす。他にも血小板にもα2受容体があることが知られており、α2受容体の阻害薬が抗血小板薬として臨床応用されている。

 

β1:心臓、腎臓の傍糸球体細胞

β1受容体の刺激は心臓の変力作用(収縮力アップ)と変時作用(心拍数)両方の増大を引き起こす。変力作用は心筋細胞膜のカルシウムチャネルによって調整され、変時作用は洞房結節ペースメーカー細胞の第四層脱分極の速度がβ1受容体の刺激によって上昇することによって起きる。変力作用と変時作用により心臓の心拍出量は増加する。よってβ1遮断薬は高血圧と狭心症、そして心不全の治療にも用いられる。また、房室結節の伝導速度を遅くするので不整脈治療への適応もある。

 

β2:気管平滑筋、血管平滑筋、肝臓、骨格筋

β2受容体を刺激することで気管支平滑筋が弛緩することがわかっているので、吸入β2作動薬が喘息の治療薬として用いられている。また、血管平滑筋細胞のβ2受容体が刺激されると、カルシウムが細胞外に放出され、平滑筋が弛緩し、血管が拡張して血圧が低下する。

(ポイント:高血圧の治療にはβ1受容体遮断薬が臨床的にはメインで使われている。β1遮断薬は心臓に対して陰性変力と陰性の変時作用を示すので心拍出量を減少させる働きを持つ。)

 

肝臓の細胞ではGsの刺激によりグリコーゲンを分解してグルコースを産生させる。

 

β3:脂肪

β3の刺激は脂肪分解を促進することがわかっており、肥満やインスリン非依存性糖尿病の治療薬として応用できないか基礎研究が行われている段階である。

注:βアドレナリン受容体のサブタイプにはほとんど信号伝達の差が存在しないので、それらの薬理学的選択性はそれぞれの受容体サブタイプの組織特異的な分布によっている。

 

 

■ノルアドレナリンとアドレナリンの作用機序の違い

 

ノルアドレナリン…

α1作用による血管収縮作用が強く血圧が上昇。これにより、圧受容器からの減圧反射が起こり迷走神経を介して心機能抑制が起こり心拍数低下。

アドレナリン…

β作用がノルアドレナリンより強いことが特徴。α1作用による血管収縮作用とβ2作用による血管拡張による末梢血管抵抗の低下が同時に起こるため血圧は変化が小さくやや上昇。強いβ作用により心機能が亢進し心拍数上昇。

 

■心臓と血管での働き(まとめ)

 

@心臓

β受容体があり、心機能が亢進する。β1が優位であるが、β1およびβ2受容体を介して洞結節の調律を増加させ、洞房結節の伝導速度を早め心拍数が増加する。心筋収縮力を増加させ、拍出量が増大する。高濃度のカテコラミンはβ3受容体を介して心収縮を抑制する。

 

@血管

α1受容体…ノルアドレナリン、アドレナリンがα1に対して最も強い血管収縮薬として働く。血管が収縮して血圧が増大し、反射性徐脈が起こる。

β2受容体…血管の平滑筋を弛緩させ、拡張期の血圧が下降する。アドレナリンでは収縮期圧はやや上昇するが、平均血圧には変化がないのはこのためである。