✅左室肥大の心電図の見方
左室が肥大すると、左後上方に大きく偏位するため、V1からしてみたら遠ざかる方向のS波がより深く、左側誘導(Ⅰ・aVL・V5-V6)からしてみたら近づいてくるのでR波がより大きくなる。
⭕左室肥大の診断基準
①V1誘導のS波+V5誘導のR波が35mm以上
②RV5≧26mm
その他QRSの0.04秒〜0.06秒の延長、ST-T変化(ST下降とT波の陰転化=ストレイン型のST-T変化)も重要
⭕左室肥大の原疾患
高血圧性心疾患、大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症など
*ストレインパターンとはなにか
ストレイン(strain)とは日本語で引っ張る、曲げるの意味。
↑の図のように左室肥大・右室肥大では特徴的なST低下が起こる。ストレイン型のST低下とも呼ばれるが、イメージとしては非対称のST低下で、最初はなだらかに落ちていて、途中から急峻に上がり始める。
✅右室肥大の心電図の見方
胸部誘導のV1に注目。
心室の興奮を見たいのでRS波をみる(V1誘導にはQ波がないのでQRSとは言わない)。心室の興奮は心室中隔、右室、左室の順番で起こる。
V1誘導において
心室中隔と右室の興奮は電極に対して向かってきているので心電図上は↑向きに振れる=R波
左室の興奮はV1からしてみたら遠ざかっているので↓向きに振れる=S波
通常は右室よりも左室の興奮が大きいので、V1誘導から見ると近づいてくるR波よりも遠ざかるS波の方が高くなるはず(左室は全身に血液を送り出す部屋なので右室よりも力強い)。しかし、右室肥大があるとR波が高くなり、S波よりも大きな振幅になりうるのである。この状態が右室肥大であり、心電図上R>Sとなる。
⭕右室肥大の診断基準
①V1-3でR波が高い
②V1-3のストレインパターン
③左側胸部誘導で深いS波(後期興奮ベクトルが右方に向かうため)
④肺性P波(Ⅱ・Ⅲ・aVfのP波増高い(2.5mV以上)
⑤右軸偏位
⭕右室肥大の原因
慢性的な右室の圧負荷が原因である。
原発性肺高血圧症やCTEPH(慢性肺血栓塞栓症)、肺動脈狭窄症など。