心肺停止にアドレナリン投与の有効性
アドレナリンはα受容体刺激作用とβ受容体刺激作用の両方がある。
α作用…血管収縮up
β作用…心筋収縮up
アドレナリンは心肺蘇生時において全身の血管を収縮させて、冠動脈血流、脳血流を増加させてくれる働きを期待して用いられる。アドレナリンは長年に渡って臨床現場で用いられて来たが、生存率を上げてくれるというエビデンスはない。
院外における心肺停止でアドレナリン投与有無での検討では
アドレナリン投与により、自己心配再開率・生存入院率は上昇させるが、神経学的予後・生存退院率には変化なし、脳機能予後予後は悪化。
またビッグデータによる解析では次の通り。
電気ショックの適応ありの場合
→9分以内にアドレナリン投与すれば病院前自己心肺再開率上昇。
が、一ヶ月後生存率は9分以内であっても変わらず、10分以上立ってからの場合はむしろ生存率を悪化させる。
脳機能予後に関してはアドレナリンの有無は影響なし。
電気ショックの適応なしの場合
→アドレナリン投与の方が自己心肺再開率、一ヶ月後生存率は良好
特に9分以内の投与であれば自己心肺再開率を有意に改善(9倍)。
が、10分以降の投与では脳機能予後を悪化させる。
端的に言えば
・電気ショックの適応あれば、アドレナリンはすぐに投与しない。
(2回めの電気ショック時にアドレナリン投与)
・電気ショックの適応なければ、アドレナリン速やかに投与!
◯アドレナリン投与量と予後の関係
3327人の心停止患者においてアドレナリン投与量と予後を分析した研究によると
アドレナリン6.1mg VS アドレナリン29mgの群の比較で高用量投与群の方が自己心拍の再開率は有意に高かったが、病院からの退院の比率には有意差はなかった。よって高用量アドレナリンは一時的には効果があるが、長期的な意義には乏しく、ガイドラインでの推奨も弱め。むしろ、アドレナリンのような薬物投与よりも胸骨圧迫、人工呼吸のほうがなによりも重要ということが改めて強調されるようになった。
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以下、復習がてら
◯心肺停止における対応アルゴリズム
まずは胸骨圧迫が大前提。
モニター心電図を装着し電気ショックが必要かどうかを確かめる。
波形がVT、無脈性VTであれば電気ショック必要
PEA、心静止であれば電気ショックは不要。
参考:看護ルー
◯電気ショックが必要な場合(VF,脈なしVT)
電気ショック終了直後、胸骨圧迫からCPRを再開、2分間継続する。
2分後に再度波形の確認を行う。VFや脈なしVTが持続していれば二回目の電気ショックとアドレナリン1mg静注を行う。投与後は20mlの生理食塩水などで後押しする。
2分間に一度心電図波形、電気ショック
アドレナリン投与は4分に一度
◯電気ショックが不要な場合(PEA,心静止)
電気ショックをしない場合は質の高いCPRをし続ける他に、2分に一度心電図で波形の確認を行う。アドレナリン1mgの投与は最初の心電図波形でショックの適応がないとわかった段階で速やかに投与して良い。
参考)
「ER・ICU診療を深める1 救急・集中治療医の頭の中Ver2」
「内科研修の素朴なギモンに答えます」
「二次救命処置コースガイド」