NOMI(非閉塞性腸管虚血)とは何か
NOMIとはnon-occlusive mesenteric ischemiaの略で非閉塞性腸管虚血のこと。
急性腸間膜虚血性病変のうち非閉塞性のNOMIが占める割合は20%と言われている。
腸間膜動静脈が開存しており閉塞しているわけでもないのに、腸間膜虚血が引き起こされる病態であり、その原因は血管攣縮(スパズム)にあると言われている。全身の血液低灌流状態にあると、優先度の高い脳や心臓に血液を送ろうと腸間膜動脈が攣縮して腸管への血液を少なくしてしまう。脳や心臓を守るという意味においては重要な生体防御反応であるが、その結果として腸管虚血・壊死をきたしてしまう。
NOMIを引き起こしやすい状態
・高齢者
・急性循環不全(心筋梗塞、心不全)
・敗血症
・呼吸不全
・多臓器不全
・脱水症
・低酸素血症
・薬剤性(ジギタリス製剤、α遮断薬など)
●身体所見の特徴
急性腹症であるが反跳痛や筋性防御など目立たない。が、腹部全体の痛みを訴える。
腸管の蠕動音は減弱し、腹部は握雪感を呈するとされている。
●採血での特徴
非特異的であり、白血球やCRP上昇の他、LDHの著明な上昇が見られる。他の急性腹症でもこれらは上がりうるので鑑別としては有用ではない。また、採血で炎症反応の上昇などなくてもNOMIを除外することはできない。
●血液ガスでの特徴
腸管の虚血状態であるのでほぼ例外なく代謝性アシドーシスを起こしている。血液検査よりも血液ガスの方が有用。
●画像検査での特徴
・腹部単純レントゲン
NOMIの患者でも25%以上は全くの正常所見というデータが有り、腹部単純レントゲンではNOMIの診断はできない。が、イレウスや腸管壁の肥厚、門脈ガス、腸壁気腫などがわかれば進行した腸管虚血のサインとなる。
・腹部CT
経口造影なしの単純CTでは腸間膜静脈や腸管壁の腫大などが目立たなくなり、むしろ診断を遅らせてしまうこともある。が、SMA閉塞症など他の急性腹症の原因を除外するという意味で大事であるし、腸管壁の肥厚、腸管拡張、腸間膜の脂肪織濃度上昇、門脈ガスなど腸管気腫などがあればNOMIと矛盾ない所見とも言える。
また特に診断的価値の高い所見としてはSMVの虚脱がある。
通常SMVはSMAよりも大きいが、SMA領域の血流障害があると、SMVに血液が帰ってこないためSMVが潰れる。SMAは動脈であるために潰れず、結果としてSMAはSMVよりも大きくなる。が、高齢者の脱水でも起こりうるのでやはり総合的な判断が必要であるが。。
・選択的上腸間膜動脈造影検査
典型例では上腸間膜動脈本幹は造影されるが、腸管壁辺縁動脈に無欠陥野領域を認める。
●治療方針
・経カテーテル法
早期に確定診断され、腸管の生存がまだ確認されている場合はカテーテルを用いて選択的に上腸間膜動脈より血管攣縮解除剤を投入する。(トラゾリン)
選択的状腸間膜動脈造影検査を適宜施行しながら攣縮の解除を見極めて中止する。再発があってはならない。
・腸管切除術
腸管の生存能力が失われていると判断された場合は緊急腸管切除術の適応となる。切除範囲は肉眼的に判断することになるので腹腔鏡よりも開腹のほうが望ましいとされる。
また追記します。
参考)
up to date
J-stage「NOMIをいかに診断し、治療するか」