ヘミブロックの心電図とその意義
心臓の刺激伝導系において、洞結節から出た刺激は房室結節→ヒス束→右脚or左脚と流れ、最終的に右室もしくは左室へと伝わる。左脚は左脚主幹の後に前乳頭筋に向かう左脚前枝と後乳頭筋に向かう左脚後枝に分かれる。
【刺激伝導系のイメージ】
画像引用:http://illustrator-amy.com/2015/07/29/post-42/
右脚もしくは左脚に伝導障害が起こると興奮にずれが生じるので心電図におけるQRS時間が延長する=脚ブロック
さて、タイトルのヘミブロックとは別名、左脚分枝ブロックともいい左脚から枝分かれしている前枝もしくは後枝のどちらかにブロックが起こることである。
つまりヘミブロック=左脚前枝ブロックor左脚後枝ブロック
以下、左脚前枝ブロックと後枝ブロックについて解説
◯左脚前枝ブロック
左脚前枝に障害が起こると刺激伝導系からの興奮は障害の起きていない後枝から伝わることになる。後枝から左室に到達した後、逆行性に左上方に伝わる。左室の興奮が遅れるわけではないのでQRS時間はほとんど延長しない。心室の興奮する方向を意味するQRSベクトルは最初は下を向くが、後半は左上方を向くことになる。そのため、Ⅱ、Ⅲ、aVFなど体の下から見る誘導では初期の下方ベクトルにより小さなr波がつくられ、後半の左上方ベクトルで大きなS波が作られる(=所謂rS型)。軸偏位は−30〰−90度の左軸偏位型となる。
【心電図の小文字と大文字表記の違いについて】
QRSにおいて最初の陰性波(基線より下側に行く波)はQ波
QRSにおいて最初の陽性波はR波
最初の陽性波に続く陰性波はS波
波が小さい場合は小文字で表記(3mm以下の波)
過去記事:心電図:大文字表記と小文字表記の違い
【左脚前枝ブロック心電図の例】
◯左脚後枝ブロック
左脚後枝に障害が起こると興奮は左脚前枝から左室に伝わり、その後逆行性に右下方に伝わる。左脚前枝ブロック同様QRS時間の延長はほとんどない。QRSベクトルは初期に左方、後半に右下方を向く。平均ベクトルは+90〰+140度の右軸偏位となる。
Ⅱ、Ⅲ、aVFなど下から見る誘導では初期の左方ベクトルは心電図で小さなq波を形成し、後半の右下方ベクトルで大きなR波が形成される(=所謂qR型)
つまりq波は体の下側から見て遠ざかってる方向への興奮で、R波は下側に近づいてくる方向の興奮である。
【左脚後枝ブロックの例】