つねぴーblog@内科専門医

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WPW症候群でデルタ波が出現する理由

WPW症候群でデルタ波が出現する理由

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画像参照:http://nurse365.net/?p=799

 

WPW症候群とは心房と心室とを直接結ぶ副伝導路(kent束)が存在し、心室が早期に興奮してしまう症候群である。本来であれば心房の興奮は刺激伝導系を介して(つまり房室結節を経て)心室に入るが、kent束があると房室結節をスキップして心室に興奮が伝わり、その分だけ心室を早期に興奮させる(心電図的にはPQ時間が短縮)。またkent束は固有心筋に連結しているため、通常の刺激伝導系よりも伝達速度が遅く、QRSの立ち上がりは穏やかになる。この穏やかな立ち上がりが心電図上の所謂デルタ波(Δ波)となる。Δ波に厳密な定義は無いが、教科書的には「P波の直後から始まる緩やかに始まってQRSに融合する三角形の波形」と解釈されている。

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画像参照:循環器用語ハンドブック(WEB版) デルタ(δ)波 | 医療関係者向け情報 トーアエイヨー

 

その後、心房の興奮はkent束だけではなく正常な刺激伝導系を介しても心室に伝わるのでその心室興奮と融合してQRS幅は延長する(つまりkent束を通じて先に心室を興奮させる刺激と、後から刺激伝導系を通って心室を興奮させる刺激の両方があるのでQRSは長い間興奮している= QRS延長)。