つねぴーblog@内科専門医

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糖尿病患者で発がんリスクが上昇する理由

糖尿病で発がんリスクが上昇する理由

 

自分の勤務先の病院では糖尿病の教育入院患者にほぼ全例腹部エコーをしている。糖尿病では悪性腫瘍の合併率が高いことが知られており、そのスクリーニング目的で行われているようである。10万人規模のコホート研究では糖尿病患者は男性では非糖尿病患者に比べて1.27倍、女性では1.21倍で発がんリスクがあるとのデータもある。

男女別に見ると以下の腫瘍が有意に多い。

男性:肝臓がん、腎臓がん、すい臓がん、大腸がん

女性:肝臓がん、胃癌

 

【糖尿病でなぜ発ガンしやすくなるのか】

・インスリンの影響

糖尿病が進行するとインスリンの抵抗性が増し(=インスリンが効きにくくなり)、膵臓からますますインスリンが分泌され、高インスリン血症になってしまう。インスリンには細胞増殖作用があるため、発がんリスクを上昇させると考えられている。また、インスリン抵抗性を改善させるメトホルミンでは発がんリスクを低下させることも知られている。

糖尿病患者の血糖コントロールで最初は内服薬で、すぐにインスリンの導入をしないのは、「患者の注射への抵抗感」だけでなく、インスリンの長期使用で発がんリスクを高めてしまうからというのもある模様。

・高血糖の影響

高血糖状態が持続すると全身の酸化ストレスを上昇させることが知られている。酸化ストレスはDNAの修復を阻害することが実験的にわかっており、傷ついたDNAが野放しになることにより発がんリスクが上昇すると考えられる。

・液性因子(レプチン)

肥満細胞から分泌されるレプチンは肥満抑制に働いてくれるホルモンであるが、細胞増殖作用もあることが指摘されている。実際にレプチン受容体は多くの腫瘍表面に発現している。