心電図T波増高の定義と原因
心電図T波増高の定義と原因
◯T波とは
T波とは心室の再分極を意味する心電図波形であるが、高カリウム血症などではこのT波の増高が見られる(=テント状T波)。T波は正常であれば1.2mV以下、もしくはQRSの高さの半分以下。
T波増高の定義は四肢誘導では0.5mV以上の基線からの上昇、胸部誘導では1.0mV以上の基線からの上昇
◯T波増高の原因
1、高カリウム血症
→血中カリウムの基準値は3.5〜5.0mEq/Lであるが5.5以上でT波の増高が見られる。6.5以上でQRS幅の延長、7.0以上でP波の振幅減少となる。原因としては腎不全や熱傷や溶血など。多くの誘導でT波の増高が見られる。
2,心筋梗塞の急性期
→急性心筋梗塞ではST-T上昇の前にT波増高が見られることがある。胸痛など伴っていれば確定的。また高カリウム血症と違い、冠動脈支配域に沿って一部の誘導でT波の増高が見られる。
3,完全左脚ブロック
→典型的にはV1誘導でrSまたはQR型、Ⅰ、V6誘導で幅広い分裂した陽性R波もしくは結節を認めるR波が出現する。
4,容量負荷による左室肥大
→T波増高以外にも左室高電位(QRS波の増高)、興奮時間の延長(QRS幅の延長)が認められる)
ER的に重要なのは高カリウム血症と心筋梗塞の除外。
正常心電図波形
高カリウムの心電図http://www.ecg-cafe.com/cat2/2-21
◯おまけ:高カリウムと心筋梗塞の鑑別@心電図
T波増高を見た時に、その形状で高カリウム血症と急性心筋梗塞を鑑別できるという報告もある。
・高カリウム血症であればT波は左右対称で、尖っている波形、スカイツリー型。
・急性心筋梗塞であればT波は非対称性で裾野が広い富士山型。
ちなみに、心電図のみで鑑別することは現実的ではないので、すみやかに血液検査でK上昇がないか確認するべき。また、心筋梗塞であれば時間経過とともにST変化が出てくるので繰り返し心電図を施工する必要がある。
◯高カリウムの心電図変化
ちなみに高カリウム血症ではテント状T波波の他にP波の消失、QRSの増大も特徴的な所見である。語呂合わせに興味のある方は過去記事参照。