SIADHで尿量低下しない機序
SIADHで尿量低下しない理由
SIADHとはADHつまりバソプレシンが過剰に産生されてしまう病態であるが、バソプレシンの働きにより集合管から水が再吸収されて血中Na濃度が低下する。単純に考えれば集合管からの水の再吸収が亢進するので尿量が低下しそうである。どのような機序で尿量は維持されるのであろうか
大きく分けて2つの理由がある。
一つはレニンアルドステロン系が抑制されることにある。レニンは腎臓の傍糸球体装置から分泌されるホルモンであるが、これは循環血漿量が低下すると血液量を何とか増やそうとするために分泌されるのである。よって、SIADHでは循環血液量は増加しているのでレニン分泌は抑えられる。するとレニンによって産生が増加するアルドステロンの量も低下することになる。アルドステロンは尿細管でナトリウムの再吸収を行っているホルモンであるので、それが抑制されれば尿中のナトリウムが増加し、それに従い尿中Naを浸透圧的に薄めようと尿中へ水分が移行して尿量が代償的に増えるのである。SIADHでは血漿ナトリウム濃度は低いが、尿中ナトリウム濃度は高値というのはひとつのポイント。
尿量が維持される2つめのポイントとしてはADHによる水の再吸収で循環血漿量が増加しているので、心房にある受容体を刺激されて心房性利尿ペプチドの分泌を引き起こすことによる。心房性利尿ペプチドは腎臓からのナトリウムの排泄を促進し、その結果水も尿中に増えることになる。