つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

PEEPとは何か、いくらに設定すればよいのか

◯PEEPとは何か

ARDSの時には持続的気道陽圧法(CPPV)、別名(*PEEP)を行わなければならない。ARDSでは好中球による毛細血管内皮傷害により血管透過性が亢進し、肺水腫が起こる。すると肺胞内の表面張力を下げるサーファクタントの濃度が薄まってしまい、肺胞が虚脱状態になる。

 *PEEPとはpositive end-expiratory pressure(呼気終末陽圧換気)の略である。これはつまり呼気時にもわずかな陽圧を残した状態で吸気を開始させるという意味

 

通常の陽圧式人工呼吸器(間欠的陽圧換気)では、吸気時に圧をかけて肺胞を膨らませ、呼気時には圧を付加しない。すると呼気時には肺胞内の圧が低下してしまうが、肺サーファクタントの分泌するサーファクタントにより肺胞は虚脱しないため正常なガス交換を行うことができる。一方でARDSや肺水腫といった状態では肺サーファクタントが減少しているために呼気時に陰圧となって肺胞が虚脱してしまう。1度虚脱してしまうと、吸気時に圧をかけても膨らまなく、また圧をかけ過ぎると肺損傷の原因となってしまう。よってARDSや肺水腫の患者にはPEEPが大事。

 

PEEPをかけた人工呼吸を行えば、呼気時にもわずかなの圧をかけるためにサーファクタント不足な肺胞でも虚脱せずにすみ、吸気時に再度圧をかければ肺胞が再び膨らんでくれる。また、PEEPでは吸気時の圧を弱めにしているのでトータルの換気量が少なくなり肺胞の負担を減らして組織傷害を増悪させずにすむ。

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◯PEEPはいくらに設定したら良いのか

PEEPを上げることによって平均気道内圧を上げて肺胞が潰れないようにしている。ただし、PEEPを上げすぎると圧損傷の恐れがあるためついつい控えめに設定される。

高すぎるPEEPは問題だが低すぎるPEEPもFiO2の割にPaO2が上がらずに(つまりPF比が低くなり)ARDSと誤って解釈されてしまう理由になりうる。

 

NEJMからPEEPも推奨値の論文があるのでご紹介。

(2007;357:1113-20)

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呼吸障害全般で使用可能。

FiO2と酸素流量の関係はおおよそ次の通り↓

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例えばリザーバー付き酸素マスク8L/分で投与しているとしたらFiO2は80%に相当するのでPEEPは14cmH2Oに設定しないといけないことになる。