酸素投与中のPaO2の解釈
SpO2が悪く酸素投与された状態の患者で血ガスを取ったときの、どのように解釈すればよいのだろうか。10L酸素投与でPaO2:100Torrと2L酸素投与でPaO2:90Torrだとしたらどちらが酸素化は良いと言えるのか。感覚ではなく客観的な指標について説明します。
◯PF比を理解する
PF比=PaO2(動脈血酸素分圧)÷FiO2(吸入酸素濃度)
*FiO2とはfraction of inspiratory oxygeの略で吸入酸素分画(吸入酸素濃度)の意である。簡単にいえば吸気時の気体に含まれる酸素の割合ということになる。例えば37度の室内空気はFiO2=0.21ということができる。
PF比とは酸素化の指標なのであるが、なぜPaO2をFiO2で割るのか。まず基本的な話であるがPaO2というのは血中の酸素分圧である。PaO2が高ければ高いほど酸素化が上手く言ってるというのはわかると思うが、その時にどれだけの濃度の酸素を与えているのか(FiO2)という点も考慮しなければならない。
例えば・・・
FiO2=0.9の酸素を与えてPaO2=120と
FiO2=0.5の酸素を与えてPaO2=100を比較したら
どちらが良いのかは一概には言えない。
そこでPaO2をFiO2で割った比=PaO2/FiO2を酸素化の指標として用いているのである。この数値が高ければ高いほどよく酸素化されているということになる。つまり吸入酸素濃度FiO2が低いのに血中酸素分圧PaO2が高いという方が良いということである。
◯酸素投与量とFiO2の関係
FiO2は大気圧であれば約0.2とわかるが、酸素投与中であれば次の換算表(↓)を参考にする。鼻カニューレ、酸素マスク、リザーバー付き酸素マスクそれぞれの酸素投与量におけるFiO2(吸入酸素濃度)が対応して書いてある。
参照:酸素療法 | 呼吸ケア | コヴィディエンアカデミア | 医療関係者の皆様へ | コヴィディエン
例えばリザーバー酸素マスク8Lであれば80%なのでFiO2は0.8ということになる。PaO2が80だとすると
PF比率=PaO2/FiO2=80/0.80=100
PF比率<200なのでARDSと診断される。
(健常人ではPF比率は400以上、200以下でARDS)
◯PF比をどう活用するか
PF比率を一度計算しておくと、その後酸素流量を減らした時にPaO2がどの程度の値になるか推測できるので便利である。高流量酸素を絶えず流し続けていると酸素による肺障害および吸収性無気肺を引き起こすのでSpO2およびPaO2が保たれているのがわかればどんどんと酸素流量を下げていく。どこまで下げれるかと言う時にPF比率を用いる。
PF比率=PaO2/FiO2なので、 一度計算してわかったPF比と目標とするPaO2(例えば80)とすると、FiO2=PaO2÷PF比率をすればFiO2がわかる。FiO2がわかれば上の表より酸素投与を何リットルにすればよいか逆算的に計算できるというわけである。