頻脈鑑別のアルゴリズム
心電図で頻脈があった時、どのように鑑別する事が出来るのか。
1、まず頻脈(一分間100回以上の脈拍)の存在を確認する。
RR間隔が0.6秒以下つまり3マス以下である
2、続いて、QRS幅をみる
■QRS幅が正常(=narrowQRS)0.1秒、2.5mm以下の幅のはず。
→上室性不整脈
上室性不整脈でもリズムがregularかirregularかで分けられる。
リズム整の場合、
洞頻脈、心房頻脈、発作性上室頻拍、心房細動など
リズム不整の場合、
心房細動など
■QRSが大きかったら(wideQRS=0.12秒以上、3mm以上)
→心室性不整脈、WPW症候群、脚ブロックを伴う上室性不整脈
wideQRSでリズム整なら
上室頻拍、上室頻拍+脚ブロック、上室頻拍+WPW症候群
wideQRSでリズム不整なら
torsade de pointes(TdP)、心房細動+脚ブロック、心房細動+WPW症候群など
頚静脈波の測定とその意義
臨床において頚静脈拍動の観察は大切。内頸静脈と上大静脈、右房の間には何も邪魔する構造がないので、内頸静脈の水柱圧つまり頚静脈圧(JVP)はそのまま正確に右房圧を反映する。JVPは体表から容易に観察できる有用な右心機能の指標となる。
頚静脈波は上図のように心周期によって変動する。
a,vと呼ばれる2つの上向きの成分と
x,yと呼ばれる2つの下降成分がある。
aは右房の収縮
cは三尖弁の右房への膨隆
xは右房の弛緩
vは収縮期に三尖弁が閉じている時の体循環からの右房への静脈還流に伴うもの
yは三尖弁解放後に右房から右室へ血液が流入し、右房圧が下がるのに対応
を意味する。
代表的な異常所見としては
顕著なa波=右室肥大、三尖弁狭窄
顕著なv波=三尖弁逆流
顕著なy波=収縮性心膜炎
右脚ブロックと左脚ブロックの違い
【脚ブロックの起こるメカニズム】
虚血や変性によって右脚・左脚の心筋が障害される。
↓
正常な興奮の伝導が阻害される。
↓
心室ではプルキンエ繊維による速い伝導から固有心筋細胞を遅く伝導する電気的興奮に依存するようになる。
↓
興奮の時間が延長するのでQRS幅が広くなる。QRS時間が0.12秒以上の場合を完全脚ブロックと言い、QRS時間が0.11~0.12秒のものを不完全脚ブロックと分類する。
【右脚ブロックのイメージ】
参考:http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph35.html
■右脚ブロックのメカニズム
正常な刺激伝導系の流れとしては洞房結節から始まった興奮が房室結節を介してヒス束、右脚・左脚、そしてプルキンエ繊維、心室へと伝達されていく。右脚ブロックが起こると洞房結節からヒス束までは正常に興奮が伝わるが、その先の右脚〜心室への伝達に時間がかかってしまう(→QRS時間の延長)。
右脚ブロックでは正常な右室の興奮伝達が遮断される。心室中隔の興奮は左脚によって伝達されるので
正常時と同じく小さなR波がV1誘導に、小さなQ波がV6誘導に記録される。更に、脱分極が中隔壁を伝わって左室自由壁に入るところまでは正常な心電図と同じである。左室が脱分極を終えて、徐々に伝わってきた細胞間の興奮伝導がブロックされた右室に到達して、右室の脱分極が始まる。
つまり大事なこととしては、QRSは脱分極の過程が引き伸ばされたことにより幅広くなる。この場合におけるQRSの後ろの方の要素は前方に位置する右室の力のみを表すので、右室におけるV1誘導の上向きの振れが記録され(=R')、また下向きの振れ(=S波)が心臓の反対側の部位におけるV6誘導に記録される。
■左脚ブロックのメカニズム
左脚ブロックでは心室中隔左側に正常な脱分極が起こらず、心室中隔右側から脱分極が始まって右脚に至る。最初の脱分極による力は右室ではなく左室の方向に向かっている。よってV1誘導にはまず下向きの揺れが記録され、V6誘導において正常時見られる小さなQ波は記録されない。心筋細胞感の伝達が左室心筋細胞に伝わるのは右室が脱分極してからである。このゆっくりとした起電力ので伝達により幅が広く末端が上向きになったQRSがV5,V6に記録されるのである。
【右脚ブロックと左脚ブロックをすばやく見分けるコツ】
右脚ブロックの心電図
・V1誘導での三相性(rSR'またはrsR'型)
・Ⅰ誘導、V6誘導での幅広いS波
左脚ブロックの心電図
・V1誘導でのrSまたはQS型
・Ⅰ誘導、V6誘導での幅広く分裂、または結節を認める陽性R波
右脚ブロックと左脚ブロックを見分けるには臨床的にはV1とV6に注目する。
V1(もしくはV2)にうさぎの耳のような三相波があれば右脚ブロック
V5(もしくはV6)にウサギの耳のような三相波があれば左脚ブロック
イラスト参照:http://www.miyake-naika.or.jp/05_health/shindenzu/shindenzu_03.html
また追記、編集します。