つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

治癒しうる認知症の鑑別memo

 

認知機能低下に出会ったら治癒しうる認知症を除外するのが重要

 

神経内科ハンドブックによれば治癒しうる認知症(treatable dementia)とは

1.脳外科的治療の対象となるもの

慢性硬膜下血腫:頭部打撲により脳表の架橋静脈が破綻して血腫が発生して圧迫することが原因。高齢者やアルコール多飲者で多く見られる。頭部CTで評価

 

正常圧水頭症(特発性、続発性):脳室が拡大するが、髄液圧が正常な病態。歩行障害、認知機能低下、尿失禁が3徴。特発性の場合、MRIでの検査が必要。Evans index(両側側脳室前角間最大幅/その部位における頭蓋内腔幅)>0.3が診断基準の1つ。tapテストで症状軽快することも診断基準の1つ。

 

・脳膿瘍:中耳炎や副鼻腔炎からの直接波及感染が最も多い。ついで先天性心疾患、肺感染症に伴う血行性伝播によるものが多い。診断には頭部CT、MRIが必要。感染初期は境界不明瞭な病巣でみられ、造影剤によりびまん性に増強される。感染後4−9日経過すると、感染の中心部は壊死に陥るとともに膿瘍を形成し、病巣周辺部は造影剤により比較的均一にリング状に増強される。

 

・硬膜動静脈瘻:異常血管による動脈と静脈のシャント。例えば海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻などが代表的。病期が進行するに従って、シャント血流が静脈洞から脳皮質静脈に逆流し、広範囲の脳静脈還流障害を起こし認知症状を呈する。静脈圧が高くなり、最終的に血管が破綻すると出血を生じ、致死的となりうる。

 

2,中枢神経系の炎症性疾患

・脳内感染症(CJD、神経梅毒、その他脳炎、髄膜炎など)

CJD:亜急性に進行。ミオクローヌス、錐体路徴候、パーキンソニズムなどが出現し多くは1年以内に死亡する。CJDでは脳波で周期性同期性放電が特徴的。採血ではほとんど異常が出現しない。髄液検査ではNSE(ニューロン特異的エノラーゼ)やユビキチン、14−3−3タンパクが発病初期から増加することが有り、早期診断の一助となりうる。

また、MRI拡散強調画像では大脳皮質、基底核に高信号域が出現し脳波よりもはやく出てくるので早期診断に有用。

神経梅毒:

近年男性同性愛者の増加により報告が増えている。

梅毒1期:感染後3週間、無痛性の潰瘍(外陰部、肛門、口腔内)

梅毒2期: 感染後3ヶ月、全身症状(リンパ節腫脹、筋肉痛、皮疹、咽頭痛)

梅毒3期:神経梅毒、心血管梅毒、ゴム腫。

神経梅毒では慢性髄膜炎(動脈内膜炎による髄膜血管梅毒)と脳実質障害(進行麻痺)、脊髄実質障害(脊髄癆)を呈する。

*進行麻痺の症状として:人格変化、認知機能低下、妄想、情緒変化などを呈しうる。

梅毒4期:

 

脳の血管炎(原発性中枢神経系血管炎):

脳血管にのみ限局して起こる血管炎。診断は容易ではなく、最終的には脳生検をしなければわからないことも。100万人あたり2.4人と非常に稀。平均年齢50歳。

症状は認知機能低下、頭痛、片麻痺、視野異常など

 

3,全身の腫瘍性疾患

・血管内悪性リンパ腫

血管内大細胞型B細胞リンパ腫は,血管内に 選択的に腫瘍細胞の増殖がみられる悪性リンパ腫の一型で,頻度も稀。組織学的には毛細血管あるいは細静脈内に大細胞リンパ腫細胞の増殖を認める特殊な悪性リンパ腫である。悪性リンパ腫細胞による全身の微小血管の腫瘍性閉塞を起こし様々な徴候をきたしうるが、 中でも中枢神経系の症候は比較的頻度が高い。精神神経症状としては、繰り返す一過性脳虚血発作や脳梗塞,認知機能低下,片麻痺や失語などの大脳巣症状,意識障害,痙攣,異 常行動などの非特異的な精神神経症状がみられることも。

 

4,代謝・内分泌疾患

・ビタミンB1欠乏

ビタミン1欠乏はウェルニッケ脳症を引き起こしうる。

3徴:意識障害、小脳失調、眼球運動障害

原因はアルコール多飲、妊娠悪阻、摂食障害など

・ビタミンB12欠乏

VitB12欠乏では巨赤芽球性貧血が有名だが、その他にもうつ病や認知機能障害を引き起こしうる。原因としては消化管手術後で胃酸や内因子分泌が低下しておりビタミン吸収障害を呈する。他にも悪性貧血で内因子欠乏であったり、高齢者の萎縮性胃炎による胃酸分泌低下でビタミン吸収障害が起こりうる。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモン測定。脳の動作も緩慢になりうつ病や認知症と間違われることも。

橋本脳症

甲状腺自己免疫疾患であり認知機能低下、意識障害など呈しうる。甲状腺機能は上昇することもあれば低下することもありうる。

 

 

5,内臓疾患

・肝疾患(肝性脳症)

羽ばたき振戦、脳波検査で徐波、血液検査でNH3上昇などで診断。

・腎疾患(尿毒症、透析脳症)

腎不全では尿素排泄ができなくなり尿毒症からの認知機能低下をきたしうる。

透析脳症とはアルミニウム脳症のこと。1970年台に水道水が透析液として用いられていた時代にアルミニウム沈着が原因で発症していたが今はまずない。

肺性脳症

肺疾患などにより肺からのCO2排泄がうまくできなくなると血中CO2濃度が上昇し、脳に移行して脳血管拡張→脳血流増加→脳浮腫→脳組織障害を呈しうる。

 

6,膠原病

・神経ベーチェット病:

ベーチェット病とは口腔粘膜のアフタ性潰瘍、外陰部潰瘍、皮膚症状、眼症状の4つの主症状とする慢性再発性の全身性の疾患。神経ベーチェット病はベーチェット病の中でも特殊型であり最も遅発性である。男性に多く、好発年齢は20−30代。

脳幹や間脳などの中枢神経系は障害されやすいが、末梢神経障害は稀。検査はMRIで脳幹部にT2強調画像高信号など認める。髄液検査で細胞増多、タンパク増加、IL6,8の著明な増加を認める。治療はステロイドパルス。

・SLE:

SLEは20−40代女性に好発の免疫疾患。患者の半数に中枢神経障害が生じる。症状は頭痛、抑うつ、失見当識、妄想、痙攣発作など。

検査では脳波で散在性徐波認める。髄液は50%でタンパクが増加し、30%で単核球が増加する。オリゴクローナルバンドの上昇を認めることも。MRIで微小血管障害により脳室周囲の白質病変を認めることも。治療はステロイド、シクロスホスファミド、アザチオプリンなど免疫抑制剤。

 

7、中毒性疾患・頭部外傷後など

・薬物(抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬)

・アルコール

・金属中毒

 

また追記します。