ビーフリードは入院何日目から開始するか
急性期疾患の入院患者で食事摂取量が少なかったり何かしらの原因で絶食状態の患者において輸液をどう選択するか。
経腸栄養が無理で長期間の絶食が確実なのであれば中心静脈栄養が選択されるが、そうでなければまずは末梢静脈ルートでの輸液で様子見ることとなる。
救急外来受診時は脱水などもあり生理食塩水などの細胞外液を投与するが、いつまでも投与する訳にはいかない。電解質のバランスを考えたらソリタ3TGなどの維持液を投与することによってNaやKが十分に足りるように補充する。というのは一般的な話であるが、
初日もしくは翌日からビーフリードなどのアミノ酸製剤を投与してよいのかという話である。
例えば維持輸液ソリタ3TG 500ml×3では150kcal×3=450kcalにしかならない。ベッド上の高齢者であっても最低1000kcalは必要であるのでこの輸液を漫然と継続していれば日に日に痩せていってしまう。一方で、ビーフリードだとブドウ糖に加えてアミノ酸が入っている分210×3=630kcalとソリタ3号液に比べたらまだ幾分マシである。
【各種点滴の組成】
◯重症患者の急性期にビーフリード投与の是非は結論がついていない
敗血症などの侵襲下においては筋肉蛋白が崩壊が亢進しており、アミノ酸を投与しても正常にタンパク合成に用いられないので意味がないという報告が多数ある。
一方で、敗血症などの侵襲的な状態でも急性期からのアミノ酸投与で体重減少を防いだり、筋肉の崩壊を抑えることができたとの報告も少なからずあるために、低栄養患者や異化亢進が疑われる患者でもアミノ酸含有の維持液として投与することが有利に働く可能性はある。
現実的には徐々に投与量を増やしていくというパターンが多いか。
教科書的には次のように説明されている例もある
経腸栄養などで入院後7日前までに目標エネルギー量の50〜80%を経腸栄養で投与可能なら経静脈栄養で補完する必要なく、1週間経過しても100%に達しない場合に補完する。また、経腸栄養が不可能な場合は異化抑制効果を考慮して400kcal/day(ビーフリード2本/day相当)から開始して7日目までに20kcal/kg/day(体重50kgなら1000kcal/day=ビーフリード4本+イントラリポス1本分))それ以降は目標量の80%として、血糖コントロールが良好であれば100%投与する。
また、アミノ酸だけでなく、脂肪に関しても絶食1周間以内に投与検討が必要である(必須脂肪酸欠乏予防+栄養の観点)。脂肪製剤はエネルギー量が大きいがビーフリードと異なり高血糖を来さない点で優れている。
ビーフリード急性期投与のデメリット
・異化亢進が強いときには投与してもタンパク質合成の材料として利用されない
・高血糖をきたしやすい(ただし、維持液(3号液)でもブドウ糖は同量入っている)
・長く食事摂取不良だった患者に入院初日から全開で投与するとrefeeding syndromeになる危険性がある