血管迷走神経性失神のメカニズム
血管迷走神経反射とは…
突然の痛み、精神的ショック、空腹、立位、排せつなどの刺激により、迷走神経の活動が亢進し、自律神経のバランスが崩れて除脈、血管拡張から血圧が低下する反応のことをいう。顔面蒼白、冷汗などを伴い、高度の場合は失神することがあり、それを血管迷走神経性失神という。(失神とは一過性の脳血流低下に伴う意識消失発作のことである)
迷走神経とは…
迷走神経とは脳神経の一つで、主に副交感神経と関係が深い神経である(副交感神経はリラックスするときの神経)。通常は交感神経と副交感神経がうまくバランスをとりあって内臓などの機能が維持されているが、何かのきっかけで迷走神経が刺激されて副交感神経が必要以上に活発になると、末梢の血管が拡張して血圧が下がってしまうのである。
迷走神経反射が起こりやすい状況の例
咳:咳によって胸腔内圧が上昇し、迷走神経が刺激されて失神を惹起する。
排尿:腹圧の急激な変化によって内臓に分布している迷走神経が刺激される。
嘔吐:咳と同様に胸腔内圧が上昇し、迷走神経が刺激されることがある。
疼痛:交感神経・副腎系を刺激し、脈拍増加・血圧上昇をもたらす。その結果、それを正常に戻そうと頸動脈の圧受容体反射が亢進し、迷走神経の活動が活発になる。採血注射の後に倒れるのはこれが原因。
前脊髄動脈閉塞症候群の病態
前脊髄動脈閉塞症候群の病態生理
脊髄は1本の前脊髄動脈と2本の後脊髄動脈によって支配されている。1本しかない前者が脊髄の2/3を潅流している。よって脊髄の虚血は必然的に前方のほうが多くなる。(とはいえ、脊髄動脈は吻合が豊富なので脳に比べたら虚血は少ない)
症状:
前脊髄動脈は後角・後索以外のすべてを支配するので、本症は後角・後索だけ生き残り、他はすべて障害される。
側索の両側の錘体路の障害・・・対麻痺(頸部であれば四肢麻痺)
側索の両側の外側脊髄視床路の障害・・・温痛覚障害
自律神経の伝導路の障害・・・神経因性膀胱、直腸障害など
筋繊維束攣縮のメカニズム
繊維束攣縮はぴくぴくとひきつるような筋肉の収縮で、肉眼で観察される。筋肉が神経による支配をされなくなると出現、つまり下位ニューロン障害で出現する。
本来あるべき大脳皮質からの命令が遮断されるので、骨格筋が勝手に脱分極し、無秩序に収縮してしまうのである。健常者でも疲労や精神的緊張によって出現することがある。たとえば疲れた時に目の下側やまぶたの上側の筋肉がぴくぴく動くことがある。
原因疾患としてはALS(筋委縮性側索硬化症)が有名である。
側方注視のメカニズム(PPRFの話)
左から右に動くものを目で追いかけるとき、左目を内点、右目を外転させる、これを右への側方注視という。右への側方注視をするとき、左目の内点には左の動眼神経、右目の外転には右の外転神経が同時に働く(水平性共同運動ともいう)。つまり両方の目を同時に、それも瞬時に動かさなければならない。
眼球運動の中枢は大脳にあるが、いちいち側方注視するたびに大脳の命令を待っている暇もない。そこで眼球運動の司令室は橋におかれ、これをPPRF(橋網様体傍正中部)という。
PPRFは外転神経核のすぐ隣にあるので外転神経へは簡単に連絡できるが、一方で動眼神経は中脳にあるので連絡が少し大変。しかも側方注視の場合、左目の外転と右目の内転or左目の内転と右目の外転というように反対側に至る必要がある。PPRFから反対側の動眼神経核へ連絡する経路はMLF=内側縦束)と呼ばれる。