心エコーで心嚢液をみたら
心エコーでの心嚢液をみたら
・健常者でも20ml程度の心嚢液は存在する。
・心エコー検査時、重力に従って心嚢液は後面に貯まるが、心嚢液が中等度(300ml以上)になると前面にも出現してくる。
・心嚢液と胸水が分かりにくいこともあるが、心臓周囲に全周性に存在する場合は心嚢液。また、患者に半坐位になってもらうことでも鑑別出来る。
・心嚢液の量の推定
少量(100ml〜300ml):心嚢液は後面にのみ出現。収縮期・拡張期ともにエコーフリースペースが出現する。
中等量(300ml〜500ml):後面のみならず右室前面にも心嚢液出現。前面のエコーフリースペースが1cm以下
多量(500ml以上):全周性に1cm以上のエコーフリースペース
・ちなみに心嚢液貯留≠心タンポナーデである。心タンポナーデは心嚢液貯留によって心臓が十分に拡張できず、心拍出量が低下した状態。心嚢液貯留が多いから心タンポナーデになりやすいというわけではない。悪性腫瘍などで慢性的に心嚢液貯留している場合は1000ml以上と多量でも心タンポナーデには至りにくい。逆に、冠動脈からの出血や心破裂などで急速に心嚢液が貯留した場合は50〜100mlと少量であっても心囊腔が拡張せずにショックに至りやすい。「少量だったから大丈夫」という判断は危険。
◯心嚢液貯留の原因
心不全、心筋梗塞後心外膜炎、急性大動脈解離、感染性心膜炎、腫瘍の転移、心臓腫瘍、自己免疫性疾患(SLE、リウマチなど)、甲状腺機能低下症、放射線性、外傷、低栄養など
◯心嚢液と胸水の鑑別
心嚢液貯留は胸水貯留と誤られることがしばしばある。診断に迷う場合は、傍胸骨アプローチ左室長軸断面で左房の後方にある下行大動脈との位置関係を確認する。エコーフリースペースが下行大動脈の前方にあれば心嚢液、後方であれば胸水と診断できる。
【心嚢液貯留像の例】
・心窩部四腔像
・傍胸骨左縁短軸像
画像参照)