ショックの原因と鑑別診断
◯ショックの診断
ショック=血圧低下ではない。ショックとは全身の循環障害によって組織の酸素の需要と供給のバランスが破綻して重要臓器のエネルギー需要を満たすことができなくなる状態。
血圧が低い以外にも「いつもより血圧が30以上低い」やショックの5P'sも重要。
*ショックの5P's=pallor(蒼白)、perspiration(冷汗)、prostration(虚脱)、pulmonary deficiency(呼吸不全)、pulselessness(脈拍触知不能)
また、脳はショックの影響を受けやすく、意識変容や不穏はショックのサインと認識する。
◯ショックの原因
ショックは大きく4つの原因に分類される。
・循環血液量減少性ショック
・心原性ショック
・閉塞性ショック
・血液分布異常性ショック
詳しくは↓参考
画像参照:看護ルー「ショックの見分け方|循環器ナースのためのフィジカルアセスメント講座」
◯ショックの鑑別診断
救急外来あるいは病棟で原因不明のショックに出会ったら輸液を全開で落とすと同時に原因検索をしなければならない。例えば緊張性気胸や心タンポナーデなど閉塞性ショックはわかればすぐに解除が可能な病態なので見逃してはならない。重要なポイント列挙
・現病歴(思い込みは危険だが一発診断となることも少なくない)
吐血・下血のエピソードがあれば出血性ショック(循環血液量減少性)
発熱や炎症反応の上昇があれば敗血症性ショック(血液分布異常性)
虫刺されや食品・薬剤投与直後であればアナフィラキシー(血液分布異常性)
胸痛のエピソードや既往歴に高血圧、高脂血症、糖尿病などあれば心筋梗塞による心原性疑う
・バイタル
高度の徐脈があれば不整脈による心原性ショックを疑う。頻脈、頻呼吸、体温の異常(特に四肢が温かい)があれば感染症による敗血症性ショックを疑う。
・身体所見(ショック患者ではルーチンで行う)
頸静脈怒張:怒張していれば心臓への血液の還りが悪い=閉塞性ショック、心原性ショック疑う。逆に虚脱していれば循環血液量減少性、血液分布異常性ショック疑う。
眼瞼結膜:蒼白であれば出血性ショック
四肢の体温:ショックなのに末梢が温かければ敗血症性ショック疑う。
呼吸音:左右差で片方聞こえなければ緊張性気胸(閉塞性ショック)疑う。
・下肢挙上(診断的治療として)
ショック状態では下肢を挙上して血圧を上げる。が、これはショックの治療であるとともに、鑑別の意味でも重要。足を上げると静脈還流量、心拍出量が増加するために血圧が上昇する。つまり血管内脱水がある時にのみ有効であるので、下肢挙上で血圧が上がれば循環血液量減少性ショックや血液分布異常性ショックが疑われる。
・血液ガス
代謝性アシドーシス、高カリウム血症(→不整脈による心原性ショック)、低血糖、乳酸値の上昇がないか。
代謝性アシドーシスはpH7.15以下であればメイロン考慮
高カリウムは心電図とともに評価するが、グルコン酸カルシウムやカリメートなどで対応。
低血糖はブドウ糖で補正。
乳酸値の上昇自体は治療できないが、循環不全により乳酸が上昇するのでどの程度危ないかの指標になる。
・胸部レントゲン(ポータブルで手配)
→緊張性気胸、大動脈解離、心不全の除外目的。
緊張性気胸:聴診で診断できるが、他の疾患も除外目的でポータブル撮影。
縦隔の拡大があれば大動脈解離、心拡大があれば心不全。
・エコー(ポイントだけ押さえて迅速に)
心嚢液貯留、胸腔内出血、腹腔内出血、IVCの虚脱・拡張、心収縮力をおおまかに確認する。頸静脈やIVCが張っていれば肺塞栓か心不全、緊張性気胸、心タンポナーデなど疑う。
初期対応・治療に関してまた追記します。