つねぴーblog

元「とある研修医の雑記帳」。アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。

ESBL産生菌とは何か

ESBL (extended-spectrum β-lactamases)とは日本語で気質拡張型βラクタマーゼの略である。複数あるβラクタマーゼの総称である故にESBLsと複数形をつけることもある。

 

【ESBL誕生の流れ】

ペニシリンが使われすぎて細菌がペニシリン分解酵素(ペニシリナーゼ)を獲得。

→ペニシリナーゼに対抗するために人類はセフェム系抗菌薬を開発して殺菌。

→一時期はセフェム系で殺されていた細菌も、対抗して新たなβラクタマーゼを産生する能力を獲得してセフェム系も分解できるようになる(これがいわゆるESBL(基質拡張型βラクタマーゼ

 

★構造的な話

ペニシリンやセフェム系はβラクタム環をもっておりβラクタム系抗菌薬に分類される。

βラクタム系抗菌薬に対抗する耐性菌はβラクタムを分解できるβラクタマーゼという酵素を持っている。

βラクタマーゼはそのアミノ酸配列によってグループAからグループDにわけられ、それぞれに基質特異性がある(つまり、分解できる抗菌薬はそれぞれ違う)。

クラスAはペニシリン系

クラスBはカルバペネム系やセフェム系

クラスCはセファロスポリン系

クラスDはオキサシリンを含むペニシリン系

をそれぞれ分解できる。ESBLはもともとペニシリンを分解できるクラスAタイプのβラクタマーゼであったが、遺伝子に突然変異が起こり、本来分解できないはずの第三世代セファロスポリン系までも分解できるようになったものである。(→つまり分解できる基質が拡大したということ)

つまり第三世代セファロスポリン(セフタジジム、セフトリアキソン、セフォタキシム、ロセフィンなど)はESBL産生菌に効果がない。注意点としては感受性試験で第三世代セフェムのうちのどれかに感受性が認められたとしても、臨床的な効果が得られないことが多い。

 

 

ESBLは大腸菌やクレブシエラに多く、これらの細菌に第三世代セファロスポリン系抗菌薬が効かなければESBLを考える必要がある。ESBLの場合はセファマイシン系(セフメタゾール)やカルバペネム系抗菌薬が有効である。が、細菌はセフメタゾールも効果が得られないようなものも増えてきていており、例えばアメリカではESBLに効果があるのはカルバペネム系だけと考えられている。現実的には軽症患者でESBLが見つかった場合は最初からカルバペネムを投与するのも気がひけるために試しにセフメタゾールで様子をみるということはしばしばあるようである。もちろん重症化のリスクがあれば迷わずカルバペネム系を行くべきである。

 

またESBLの大きな問題点としては、ESBL産生遺伝子はプラスミド上にあるのでDNAが他の細菌に伝播しやすく、ESBLを持った細菌が院内でどんどんと広がってしまう危険性があることである。

 

まとめ

・ESBLはペニシリンや第一世代セフェムに加えて第三世代セフェムも分解できるようになったもの。

・大腸菌やクレブしエラが多く持つ。

・安全に使えるのはカルバペネムだけ(セフメタゾールも効くかも)

・ESBL遺伝子は院内で広がっていくので注意