エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンの違い
各種マクロライド系抗生物質の違い・使い分け
エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンの違い
”まっくろなエクレア”世代順の覚え方
(マクロライド=エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン)
・マクロライド系の抗生物質で微生物のリボソーム50Sサブユニットに結合してタンパク合成を阻害することで静菌的に働く。
・エリスロマイシンが基本形、クラリスロマイシン、アジスロマイシンはその誘導体で組織移行性や抗菌スペクトラムが改善している。
エリスロマイシン:グラム陽性球菌
クラリスロマイシン:グラム陽性球菌スペクトラムを強化
アジスロマイシン:グラム陽性菌に加えてグラム陰性桿菌やクラミジアなどにスペクトラムを拡大
・が、スペクトラムが漠然と広く、どういう状況で使えばよいのかわかりづらい抗菌薬でもある。実際にはペニシリンアレルギーなどβラクタム系が使えない場合の代替薬として用いられるケースがほとんど。
・交差耐性があるので1種類のマクロライドへの耐性を持たれたら他のマクロライドも使えない。
・マクロライドの副作用として、消化管の蠕動運動を亢進させてしまい下痢を引き起こしうるが世代とともに改善。エリスロマイシンが一番つらい。その他に困る副作用としてはQT延長とそれに伴なうtorsade de pointesである。
エリスロマイシン
・ほとんどの組織に移行するが中枢神経系には行かない(髄膜炎には使えない)
・半減期は1−2時間程度と短い
・歴史的には細胞内寄生をするマイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなど非定型肺炎に有効であり用いられていた。
・一方で黄色ブドウ球菌やレンサ球菌、肺炎球菌などは耐性化が深刻であり使ってはならない。(A群ベータ溶連菌のうち日本では80%が耐性を持っている。byレジデントのための感染症診療マニュアル)
・経口薬はクラリスロマイシン、アジスロマイシンに比べてあらゆる点で劣るため、実際の存在意義は少ない。
・びまん性汎細気管支炎に対してマクロライド少量投与という方法では用いられる。気道の過分泌を抑えることができる。
クラリスロマイシン
・エリスロマイシンのグラム陽性球菌と細胞内寄生菌(レジオネラ、マイコプラズマ、クラミジア)に対する活性が強化されている。
・非結核性抗酸菌症(MAC)に対してはマクロライド中最も活性が高い。
・肺炎球菌に関しては耐性が深刻なので使うべきではない。
・扁桃炎に関してはペニシリンアレルギーでβラクタムが使えない環境下では候補に上がるがこれも耐性化が深刻。
・ピロリ菌治療に多剤併用療法で用いられる。
アジスロマイシン
・薬理作用は他のマクロライド系と同じであるが、グラム陰性桿菌に対する活性が強い(特にインフルエンザ菌に対しては強力)。
・また細胞内寄生(クラミジア、レジオネラ、マイコプラズマ)に関してはアジスロマイシンは細胞内濃度が長く維持されるために非常によく効く。レジオネラでは第一選択薬。
・STDのクラミジア感染症でも一回のアジスロマイシン投与で治療可能(ジスロマックSR®)。
・その他、成人の百日咳でも第一選択薬はアジスロマイシン。(慢性化してたら効果はないが)。
ちょっとまとめ
・エリスロマイシン:下痢の副作用強く、クラリスやアジスロより抗菌力弱いのでほとんど使われない。
・アジスロマイシンはクラリスロマイシンに似ているが、飲みやすさ、半減期の長さ、副作用の少なさからアジスロマイシンの方が有能。(ただしピロリ菌殺菌に関してはクラリスロマイシンの方が上)。
また追記、更新します。