骨盤骨折疑いへのアプローチ
骨盤骨折疑いへのアプローチ@救急外来
骨盤の解剖
画像引用http://www.takatsu-chiro.com/yougoshu/name-pelvis.htm
【骨盤骨折の種類】
骨盤骨折には骨盤輪の破綻する骨盤輪骨折と股関節を形成する寛骨臼骨折とにわけられる。骨盤は周囲に血管が豊富であることから骨盤輪骨折では大量出血のリスクが有り、一方で寛骨臼骨折では失血死のリスクは少ないが正しく内固定をしないと寝たきりの原因になってしまう。
【身体所見】(JATEC参照)
◯視診による肢位異常
◯打撲痕
◯皮下出血
◯下肢長差
◯開放創の有無
◯恥骨結合の圧痛の有無:
恥骨の場所を正確に↓
◯仙骨部〜仙腸関節部などの骨盤後方部を含めた圧痛や叩打痛の有無
仙腸関節の場所を正確に…↓(イラスト参照:腰痛と仙腸関節の関係 〜 関節の異常が痛みの原因?)
◯他動痛の有無;
他動的に股関節を外旋、内旋させて股関節部〜恥骨・坐骨部にかけての疼痛の有無
◯骨盤の不安定性:
腸骨翼を内側、外側、さらに上下のずれを調べ不安定性や疼痛の有無を確かめる
◯直腸診:
肛門括約筋の緊張度、前立腺触知出来るか(出来なければ尿道損傷を示唆)、血液付着(直腸癖の損傷)、経直腸的に骨盤骨折片を触知できることもある。
◯その他の部位の骨折:骨盤骨折疑いでは他の骨折(脊椎、大腿骨頸部、膝、下腿の骨折もないか疑う)
【検査】骨盤単純レントゲン…何に着目するか
大前提として正しく正面から撮られているか確認する→脊椎の最も後方で中央に位置する棘突起と左右の椎弓根との距離に左右差がなければ正面からきちんと撮られていると考えることが出来る。
問題なければ以下の9項目をチェック。
(primary-care trauma life support より引用)
1、左右対称性
2、腸骨翼の大きさ・高さ
3、恥骨結合の離開(2.5cm以上で有意)
4、臼蓋骨折
5、閉鎖孔の左右差
6、恥骨・坐骨の骨折
7、第5腰椎横突起骨折(腸腰靭帯断裂を示唆)
8、仙腸関節の離開(4mm以上で有意)
9、仙骨骨折
骨盤骨折のレントゲン例
【寛骨臼骨折】
画像参照:「骨盤骨折」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
【恥骨骨折、坐骨骨折】
画像参照:藤元メディカルシステム - 先端医療講座 - 一般撮影(レントゲン)2
【恥骨骨折、坐骨骨折、仙骨骨折、第5腰椎横突起骨折】
画像参照:Pelvic ring disruption; Vertical Shaer force
【仙腸関節骨折、恥骨結合離開】
画像参考:Pelvic Fracture Imaging: Overview, Computed Tomography, Magnetic Resonance Imaging
◯治療
・急速輸液(全例、全開)
・骨盤簡易固定:シーツラッピング(youtubeの解説動画↓)
シーツラッピングはTAEまでの繋ぎとして行う。幅30cmほどの帯状のシーツで骨盤と下腹部を巻いて骨盤を安定化させる。結ぶと緩んでしまうのでシーツで十字を作ってから鉗子で固定する。
・TAE(transcatheter arterial embolization)
内腸骨動脈の破綻領域に塞栓物質もしくはコイルを詰める。
TAEの適応
・骨盤からの出血に対して24時間以内に輸血4単位以上(または48時間以内に輸血6単位以上が予想される)
・FASTで腹腔内出血がなく骨盤骨折によるショック状態
・CTで骨盤血腫が大きい
・CTで仮性動脈瘤、血管外露出像を認める場合
また追記・編集します。