つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

ANP,BNPの役割

■ANPとBNPの違い

BNPとはbrain natriuretic peptideの略で脳性ナトリウム利尿ペプチドのこと(当初ブタの脳から発見されたために”脳性”と呼ばれるが実際には心室から分泌される)。

ANPとはatrial natriuretic peptideの略で心房性ナトリウム利尿ペプチドのこと。

 

 

■何の指標か

ANPは心房が、BNPは心室が分泌する循環調整ホルモンであり、心房・心室の負荷に応じて血中濃度が上昇するので心不全の病態把握に有用である。具体的にはANPは新防壁進展が負荷となり、BNPは心室負荷が分泌刺激となる。心不全の重症度に応じて上昇し、治療により低下するので診断及び重症度判定、治療効果の評価に用いられる。

 

■生理的な役割

ANPとBNPは標的臓器において基本的にはレニンーアンギオテンシンーアルドステロン系と逆の左様を融資、要領不可を軽減する方向に作用する。つまり血管平滑筋を弛緩させて毛細血管透過性を亢進させる。腎臓ではナトリウム利尿、水利尿を促進し、全体として体液量の減少、血圧の低下を誘導する。尚、ANPの半減期は2分、BNPの半減期は20分程度である。

 

多くの場合ANPとBNPは並行して変動するが、急速に心臓の圧変化が生じた場合、ANPの方がBNPより大きく反応する。一方で、BNPは変化率が起きいので臨床における心不全の評価の指標として主に用いられる。血漿BNP濃度と慢性心不全のNYHA分類の相関を調べた研究があるが以下の様な結果が出ているようである。

 

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Sudoh T et al:A new natriuretic peptide in porcine brain.
Nature332:78-81,1988

 

■NT-proBNPとは

NT-proBNPとはBNP前駆物質のN末端である(NTはN-terminalの略)。BNPが測定に血漿を用いていて不安定であるが、NT-proBNPは血清で測定でき更に半減期が2時間ほどもあり安定という利点を有する。一般的にはBNPとNT-proBNPの血中濃度はよく相関する。BNPがエンドペプチダーゼによって分解されるのに対してNT-proBNPは分解されずに腎臓から排泄される。このため、腎不全患者ではNT-proBNPが実際よりも高値となってしまうので注意が必要

 

 

心筋梗塞でST上昇するメカニズム

急性心筋梗塞で心電図STが何故上がるのか。

 

障害部位では細胞が壊れイオンが漏出しやすい状態になる。

イオン漏出の状態は正常な電気刺激よりも前に、障害部位の心筋細胞に部分的な脱分極を引き起こし、電気的にプラスの状態にさせる。電流はプラスからマイナス方向に流れるので、障害部位から離れていくような電流(=障害電流)を生じさせ、心電図の基線を下方にシフトさせる。基本的なことではあるが、見ている側に近づく電流は心電図で上昇し、遠ざかる電流は低下として記録される。

 

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心電図の誘導から遠ざかるように電気が流れる。

 

心電図は絶対的な電位を反映しているのではなく、あくまで相対的なものなので基線全体が下にシフトしてもそれは感知できない。刺激に続き、心臓全体が完全に脱分極すると電位はゼロになるが、異常に下にシフトしていた基線に比べて上側に記録される。脱分極している時だけ心電図上で上昇している=ST上昇として記録されるのである。

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つまり、急性心筋梗塞ではST上昇しているというよりも、他の部位が下にシフトして、ST部分だけは0なのでSTがあたかも上昇しているかのような心電図に見えるということである。