心電図でQT延長を見たら
・QT延長症候群の診断基準
不整脈ガイドラインでは以下の診断基準に従って評価する。加点制で合計3.5点異常であればQT延長症候群と診断される(先天性であれ二次性であれ)。
◯QT延長症候群には至らないが、QT延長を認めた場合
上記の診断基準でQT延長症候群には至らないがQT延長がある場合はどうするか。心電図異常があっても症状がなく、家族歴もなく、そして運動負荷心電図でQTc延長しない場合は半年から1年間隔で経過観察は必要であるが運動制限や生活上の制限は不要。
が、致死的な疾患であるQT延長症候群の慎重な否定は必要。
◯先天性のQT延長症候群
心筋イオンチャネルの異常によってQT延長を呈して、torsade de pointesを来して突然死を引き起こす疾患。先天性QT延長症候群の突然死は年間2%ほど。
QT 延長の程度が大きく不整脈の発症予後に影響し,男女に関係なく550msec以上であればTdPの危険が高まり, 600 msec 以上であれば,さらに高くなる.T 波交互脈(T wave alternans)や,乳児期から発症する例やβ 遮断薬などの治療下にも不整脈イベントを起こす症例の予後は悪い.
・二次性のQT延長症候群を考える
先天性QT延長症候群がなくても薬剤や他の疾患が原因で二次的にQT延長し、torsade de pointesをきたす危険性がある。
◯薬剤性の原因
◯薬剤性以外の他の病態
・低カリウム血症、低マグネシウム血症、低カルシウム血症
・徐脈(房室ブロック、洞不全症候群)
・中枢神経疾患(クモ膜下出血、頭蓋内出血、外傷後)
・うっ血性心不全、高血圧、左室肥大
・甲状腺機能低下症、糖尿病、低血糖
・急性膵炎
・高齢、女性、脱水
薬剤性であれ、他の病態であれ単一の原因ではQT延長はわずかしか起きないが複数の因子が絡み合ってQT延長が助長されることもあるので注意。
QTc 間隔が550 msec(または500 msec)以上になると TdP は発現しやすいとされるが,TdP 発生直前には T 波 形の異常や変動が顕著になり,また期外収縮によりshortlong-shortのシークエンスを呈することが多く,TdP が発生するときの QT 間隔は 600 msec またはそれ以上へと著明に延長している。
◯TdPについて
TdPの心電図波形は、QRS群の捻れを伴う多形性心室頻拍を錯覚させる。すなわち、波形のピークが上下の畝りを見せる。血行動態的に不安定であり、動脈圧が突発性に低下し、眩暈、失神を引き起こす。多くの場合は数秒で正常律に戻るが、継続する場合は心室細動に移行し、医学的介入がないと突然死する可能性もある。
◯治療(QT延長症候群によってTdPが起こっている場合)
・原因となっている考えられる薬剤を中止。
・硫酸マグネシウム(2gを数分で静脈注射、更に状態によっては2-20mg/minで持続静注)
・イソプロテレノール(β刺激薬)(持続点滴投与で心拍数100回/分を目標に投与量を調節する)
・カリウム点滴(カリウムが正常範囲でも4.5〜5.0を目標に点滴投与する)
・リドカイン静注(50〜100mgを数分で静注した後に維持点滴を行う)
また、徐脈が原因と考えられる場合は80-100/分の一時的ペーシングやアトロピン(0.01-0.02mg/kg)静注で心拍数を増加させる。
*QTcの補正式に関して(bazett法とFridericia法の違い)
心電図自動解析ではQTcB,QTcF(b/f)などと2つのQTcが解析されていることがある。QTcBはbazett法による解析法で、QTcFはFridericia法による解析である。心拍数が高い場合,Bazett法(QTc = QT/RR1/2)によってQT時間を補正すると過剰修正となるため,Fridericia法(QTc = QT/RR1/3) で行うことが勧められている.
途中、また追記します。