つねぴーblog@内科専攻医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

急性肺塞栓症の治療方針

肺塞栓症の治療についてmemo

 

(急性肺血栓塞栓症ガイドライン2017より)

f:id:tsunepi:20181030151306p:plain

 

◯心肺停止もしくはショック状態のとき

抗凝固療法に加えて血栓溶解療法を開始。

 

◯血圧が保たれている場合

下記の簡易PESIスコアで重症度分類する。

f:id:tsunepi:20181030151914p:plain

 ガイドライン的には・・・

簡易PESIスコア0点であれば抗凝固療法のみを行い早期退院目指す。

 

◯薬物療法はどうするか

f:id:tsunepi:20181030153830p:plain

ガイドラインで推奨クラス1、エビデンスレベルAのものとして

「非経口抗凝固薬あるいはDOACを投与する。エドキサバンは非傾向抗凝固薬による適切な初期治療後に投与、リバーロキサバン及びアピキサバンは一定期間の高用量における初期治療後に常用量にて投与する。」

「急性PTEが疑われる場合や確定診断まで時間がかかる場合は、診断の途中であっても中和可能な未分画ヘパリンによる加療を行って良い。」

 

◯ヘパリンの使い方byガイドライン2017

・欧州のガイドラインではまず80単位/kgあるいは5000単位を単回静脈投与。

・以後、時間あたり18単位/kgの持続静注を開始する。

・APTTが1.5-2.5倍になるように調節する(この数値の強固な根拠はなく動物実験データと長年の臨床経験に基づいている)

・APTT投与後6時間後にAPTT測定を行い、変更があれば更に6時間後にAPTT測定。連続2回のAPTTが治療域となれば1日1回のAPTT測定に変更する。

・APTT値が治療域圏外だったときの調節法↓

f:id:tsunepi:20181030171422p:plain

・ヘパリンによって出血性合併症が生じた場合:ヘパリンの半減期は60分と短いため中止後速やかに効果は減弱するため、ヘパリン中止と必要に応じて輸血で対処可能なことが多い。大出血や致死的な状況においては硫酸プロタミンで中和行う、ヘパリン100単位あたり硫酸プロタミンの必要量は1mg。(ヘパリンの半減期は60分であるので

 

◯経口抗凝固薬への移行に関して

ワルファリンに移行する場合、未分画ヘパリンはワルファリンコントロールが安定するまで継続する。

・最近ではヘパリンとワルファリンを同時に開始して5日異常投与したあと、PT-INRが目標値に達してから24時間以上経過した時点で未分画ヘパリンを中止する方法も推奨されている。

・ワーファリンの初期投与量は3〜5mgで開始されることが多い。(INRコントロールは通常1.5-2.5を目標に。(関係ないが心房細動ガイドラインでは70歳以上の患者にはPT-INR1.6〜2.6が推奨されている。)

 

DOACに移行する場合、ヘパリン持続静注しているのならばヘパリン中止後にDOACの投与を開始する。(DOACはワーファリンと異なり即効性があるため切り替え投与が可能。

◯エドキサバン(リクシアナ®):

非傾向抗凝固薬(ヘパリン)による初期治療後に、通常は60mg/dayで開始する。DOACの中で唯一減量基準がある。

◯リバーロキサバン(イグザレルト®):

一日一回の経口投与。通常、初期三週間は15mgを一日2回投与し、その後は15mgを一日1回投与する。

◯アピキサバン(エリキュース®):

通常、初期一週間は10mgを1日2回投与し、その後は5mgを1日2回投与する。

 

(抗凝固薬の内服期間)

・危険因子が可逆的な場合:少なくとも3ヶ月継続

・特発性静脈血栓塞栓症の場合:少なくとも6ヶ月継続

・先天性凝固以上や危険因子が長期にわたり存在、複数回の再発:無期限

 

◯血栓溶解療法(tPA治療:モンテプラーゼ®)

 急性肺血栓塞栓症において、血行動態が不安定な場合においては抗凝固薬のみでは不十分であり、tPA治療が考慮される。特に、発症時の有心機能不全の有無が重要視されており、血圧が正常であっても右心機能不全症状がある場合は右心機能正常に比べて死亡率が高いためtPA治療を考慮すべきとの報告もある。

 

まとめると、血栓溶解療法の適応は

・ショックバイタル→抗凝固薬+血栓溶解療法

・正常血圧で右心機能障害を有する場合には抗凝固療法が第一選択になるが、トロポニンやBNP上昇があればモニタリングし、循環動態の悪化徴候が見られた場合には血栓溶解療法を考慮する。

(血栓溶解療法の禁忌@2017年ガイドライン)

f:id:tsunepi:20181101131727p:plain

 

 

◯下大静脈フィルター挿入(永久的タイプと非永久的タイプ)

抗凝固療法が行えない、あるいは集中治療にもかかわらず再発する静脈血栓症の場合に考慮される。その他DVTに対して線溶療法を行う場合も適応になる。フィルターを下肢静脈に留置すれば下肢に深部静脈血栓があったとしても、フィルターが血栓をトラップして肺塞栓を予防できるのではないかという考えである。が、フィルター留置群と非留置群では肺塞栓症の発症率に有意差はなく、むしろフィルター留置群の方がDVTの再発率が高いという残念な報告もある模様。

 

 

【参考】

・肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン

・A clinical trial of vena caval filters in the prevention of pulmonary embolism in patients with proximal deep-vein thrombosis. Prévention du Risque... - PubMed - NCBI

・ICU実践ハンドブック

・しみじみわかる血栓止血VOL2