吸気時に収縮期血圧が10mmHg以上下がり、脈が小さくなることを奇脈という。(正常でも吸気時には多少下がるが、それが10mmHg以上の場合に奇脈と呼ばれる。
奇脈を呈する疾患としては、吸気時に左室の拡張が制限される心原性ショックや心タンポナーデ、収縮性心膜炎などが知られている。
なぜ奇脈が起こるのか、その病態生理
流れを追ってみます。
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1:吸気で胸腔内圧が低下し、心膜腔圧も低下する。
吸気時は横隔膜が下がり、胸腔内の圧力は下がる(PV=nRTで考えれば、体積が大きくなったから胸腔内の圧力は下がると考えることができる。
2:静脈還流量増加
胸腔内がより陰圧になるので、そこに周りから血が流れやすくなる=静脈還流の上昇
3:静脈血の右室充満@拡張期
4:心室拡張障害のため、心臓全体が外側に拡張できない
5:心室中隔が左室側に偏位
6:左室の充満容量低下
7:左室からの1回拍出量低下
8:収縮期血圧低下
という感じです。
吸気時の収縮期血圧の低下が著しいと、触診の際に脈が弱くなったり触れなくなったりするので奇脈と呼ばれているのである。