高血圧緊急症への対応
高血圧緊急症への対応
◯高血圧切迫症
収縮期血圧220mmHgまたは拡張期血圧125mmHg以上で末梢臓器の障害のないものをいう。臓器障害リスクがあるためカタプレス®(クロニジン塩酸塩)などを用いて降圧を開始する。ニフェジピン(アダラート®)の舌下投与は行わない。急速に血圧を下げると逆に脳血流や冠動脈の虚血を助長し死亡率が上昇すると言われている。
また、無症状で収縮期血圧が200mmHg以下ぐらいのものであれば単剤で降圧を開始する。血圧が下がりすぎてふらつきなどの症状が出ると患者の高血圧治療に対するモチベーションの低下を招く。
◯高血圧緊急症
高血圧緊急症とは高血圧性脳症(精神症状)、高血圧性腎症(蛋白尿、血尿)、脳内出血、急性心不全、心筋梗塞、大動脈解離などを種々の臓器障害を伴う重症高血圧症のこと。収縮期血圧が240mmHg近くあっても「どうも肩がこる」などという症状は高血圧緊急症ではない。頭痛、嘔吐、視力障害、意識障害、痙攣などぎょっとする症状のものを高血圧緊急症という。(by循環器治療ファイル)
検査としては主に以下のものが必要。
血圧左右差(大動脈解離がないか)
採血(BUN、Cre)
心電図(心筋虚血の有無)
胸部レントゲン(大動脈解離、急性心不全などないか)
尿検査(腎障害の有無→蛋白尿、血尿)
頭部CT(神経学的異常があるならば)
治療としてはニカルジピン®などの短時間作用型の静注薬。
が、緊急で正常血圧まで戻す必要はない。1時間で10〜15%、3−4時間で25%程度の降圧を目標とする。
◯ニカルジピンの場合、具体的にどのような指示を出すか
まず、ニカルジピン10mg をオーダー。5Aオーダー程まとめてオーダーしておくと合計50mgになり、例えば一時間2mgペースで投与するとなると24時間で48mgなので1日程度持つ計算。点滴は希釈してから使うことも有るが、メインで生理食塩水などが入っている場合は、側管からニカルジピンの原液を使っても混合されて希釈されるので大丈夫。
【指示の一例】
・収縮期血圧180mmHg以上時、ニカルジピンの投与を2ml早送り後、2ml/hより開始。
・ニカルジピン投与中に収縮期血圧180mmHg以上時、1時間以内に血圧再検。再検にて収縮期血圧180mmHg以上時、ニカルジピン投与速度を1ml/h増量後は1時間以内に血圧再検。最大10ml/hまで
・ニカルジピン投与中に収縮期血圧150mmHg以下の場合、ニカルジピン投与速度を1ml/h減量。offも可能。減量後は1時間以内に再検。