とある研修医の雑記帳

東京から大阪の医学部へ亡命して研修医になった人のブログ。勉強のまとめ、思いつきの考察、ちょっとした雑学などなど。アウトプットが趣味です。

経口血糖降下薬の使い分け

経口血糖降下薬の作用機序と使い分け

 

■ 経口血糖降下薬の適応

糖尿病治療はまず食事療法・運動療法からスタートするが、それでも血糖コントロール不良の場合は経口血糖降下薬の適応となる。

血糖コントロール不良とは以下のいずれか1つ以上が当てはまるとき

・空腹時血糖160mg/dl以上

・食後2時間血糖値220mg/dl以上

・HbA1c8.0%以上

 

 

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糖尿病治療ガイド2016-2017(抜粋):日本糖尿病学会 The Japan Diabetes Societyより

 

・経口血糖降下薬はその目的によって3つの種類に分けられる。

・インスリン抵抗性改善系:ビグアナイド薬、チアゾリジン薬

・インスリン分泌促進系:SU薬、グリニド薬、DPP-4阻害薬

・糖吸収、排泄調節系:αグルコシダーゼ阻害薬、SGLT2阻害薬

 

 

■どういうアプローチで経口血糖降下薬を使っていくか

(ADA/EASDの共同声明(2012)参照)

 

・禁忌がなければメトホルミン(ビグアナイド)が第一選択薬

ビグアナイドはインスリン抵抗性改善、低血糖リスク少ない、体重増加しないなどの利点がある。乳酸アシドーシスの副作用が有名であるが頻度は3例/10万例の非常に少ない。

・メトホルミンに併用する二剤目としてはDPP-4阻害薬もしくはαGIを使用する

DPP4阻害薬は血糖依存性に働くので食後の高血糖を抑えられ、1日の血糖変動を少なく出来る。αGIは炭水化物が分解されてできた2糖類が腸管で単糖類に分解するのを阻害するので、これもまた食後の高血糖を防ぐことが出来る。

・SU薬は第4選択薬以降で使う。そして最小量から。

SU薬は長年使われてきた薬であるが、効果が強すぎるため現在では積極的に用いられない。

SU薬は膵臓β細胞に直接作用し、インスリン分泌を増やす。低血糖のリスクが高いので効果が無くても安易に増量しない。

 

・併用療法は3剤までとし、それでも血糖コントロールがうまくいかなければインスリン導入する。インスリン療法の相対適応であればインスリン導入をむやみに遅らせない

インスリン療法の相対適応とは以下の1〜3の内の1つ以上+4を満たす場合

1,空腹時血糖250mg/dl以上

2、随時血糖350mg/dl以上

3、尿ケトン体陽性(+)以上

4、体重の1kg/月以上減少

 

■各経口血糖降下薬の各論

【ビグアナイド薬について(一般名:メトホルミン、ブホルミン)】

作用機序:ビグアナイドはAMPキナーゼ(AMPK)を活性化させる作用があり、AMPKが肝臓での糖新生の抑制を抑制している。(肝臓ではグリコーゲンの分解や乳酸からの糖新生によって血糖値を上昇させているが、ビグアナイドは糖新生を抑制させることで血糖値の上昇を抑制している)。ビグアナイドはその他にも消化管からの糖吸収の抑制、末梢組織でのインスリン感受性の改善などの膵外作用も有する。

適応:血糖コントロールに際して体重が増加しにくいので、肥満による2型糖尿病では第一選択となる。また、インスリン分泌を促進するわけではないので低血糖になるリスクは低い。

注意点:重篤な副作用として乳酸アシドーシスがある。

 

【チアゾリジンについて】

作用機序:「小型脂肪細胞への分化促進」

肥大した脂肪細胞ではTNFαやアディポサイトカインが過剰に分泌され、インスリン抵抗性を改善させる善玉アディポサイトカイン”アディポネクチン”が低下してしまう。チアゾリジンは脂肪細胞に発現しているPPAR-γに結合し、インスリンの感受性や小型脂肪細胞へ分化を促す遺伝子活性の調節を行う。

小型脂肪細胞においてはTNFαやアディポネクチンの分泌は正常であるので相対的にアディポサイトカインの分泌は改善され、インスリン抵抗性を改善させることが出来る。

適応:インスリン抵抗性を改善する薬であるので、肥満した糖尿病患者などインスリン抵抗性が増大している状態においての効果は高い。

効能:アクトス30mgの単独降下で平均HbA1c1%程度の改善が見られる。(特にインスリン抵抗性を有する患者や女性に有効)(by PRACTICAL study)

副作用:体重増加、浮腫、低血糖、骨折リスク、膀胱がん

 

【スルホニル尿素薬について】

作用機序:膵臓β細胞のカリウムチャネルに直接作用し、インスリン分泌作用を増強させる。

特徴:SU薬最大の問題は血糖値にかかわらずインスリンを分泌してしまい低血糖のリスクが常に付きまとうことである(ビグアナイドのような薬剤では血糖依存性に効果があるので血糖値が低い場合には効果も弱く副作用のリスクが低い)。またSU薬の作用時間は長いために低血糖昏睡を起こして50%ブドウ糖を静注して意識が回復してからも残ってるSU薬の作用で低血糖になってしまうほどである。

適応:第一選択薬として選ばれることはない。基本的に他剤との併用。

 

【速効型インスリン分泌薬(グリニド薬)について】

作用機序:膵臓β細胞のスルホニル尿素受容体に結合しインスリン分泌を促進させる。(SU薬と同じ作用機序であるが、SU薬よりも作用時間が速く、持続時間が短いという特徴を持つ。)

適応:2型糖尿病患者では食後のインスリン分泌リズムが遅れてしまうが、グリニド薬ではSU薬を刺激することで食後のインスリン追加分泌のスピードを早くすることが出来る。つまり食後高血糖を防ぐことが出来る。(一方でSU薬は作用発現まで時間がかかるので空腹時高血糖を是正することが出来る)

 

【DPP4阻害剤(グラクティブ、ジャヌビア、テネリアなど)】

作用機序:DPP4はインクレチンを分解してしまう酵素。インクレチンは食事摂取などによる血糖上昇伴い消化管から分泌されて膵臓からのインスリン分泌を促進するホルモンの総称(GIPやGLP-1など)。DPP4阻害薬を投与するとインクレチンの分解が抑えられるので(=活性型GIPやGLP1の濃度が高まる)、結果的にインスリン分泌が促進される。

使い方ブドウ糖濃度依存性に働くので低血糖のリスクは低い。また、食後の高血糖時に強く働くので血糖の上がりを防ぎ、1日の血糖変動幅を縮小する効果がある。食事療法と併用すれば長期的に安定した血糖改善効果が期待できる。

 

【αグルコシダーゼ阻害薬について】

作用機序:白米などの炭水化物はまず唾液のアミラーゼによって二糖類に分解される。その後、小腸上皮から分泌されるαグルコシダーゼによってグルコースとフルクトースなどの単糖類に分解され、吸収される。よってαグルコシダーゼ阻害薬を投与すればグルコースの産生を抑制することが出来るのでその結果、腸管からの糖の吸収をゆるやかにすることができる。

適応:単独投与の場合は空腹時血糖は高くないが、食後の血糖のみが高くなりやすい患者が良い適応である。他の経口血糖降下薬との併用の場合は、食後に著しい高血糖を呈する場合に有効。

・単独投与例:空腹時血糖150g/dl以下、食後血糖200mg/dl程度の2型糖尿病

副作用:下痢、腹部膨満感、放屁の増加など消化器症状があり、アドヒアランスを低下させうるので注意。特に大腸手術歴のある患者で特によく起こる。ただ他の経口血糖降下薬のような体重増加が起こりにくい。

効能:単独使用でのHbA1cの改善率は0.5-1.0%

 

【SGLT2阻害薬について】

 作用機序:近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制することで尿から糖を排泄し、血糖値を低下させる。

適応:メタボリックシンドロームなどで肥満のある患者。

腎機能が保たれていることも大事な条件(原尿中にろ過された糖の再吸収を防ぐためにSGLT2阻害薬は腎機能依存性に働く)

効能:1日100g程度のブドウ糖を尿中に排泄することができ、カロリーにすると400Kcal相当。糖質をエネルギーとして利用できなくなる代わりにβ酸化で脂肪の分解が進むために内臓脂肪が減少し、肥満が解消される。

副作用:浸透圧利尿による脱水、尿路へのブドウ糖排泄による尿路感染症。

脂肪分解によるケトアシドーシスのリスク(@インスリンの作用不足の患者)

筋肉量の減少(@脂肪の少ないヤセ型の患者。糖も脂肪もないので筋肉がエネルギー源として分解されてしまう)

 

 

また追記予定…