2音の固定性分裂のメカニズム
テーマ:心音
2音はⅡAとⅡPの2つの音よりなる。
ⅡAとは大動脈弁の閉鎖音
ⅡPとは肺動脈弁の閉鎖音
健常人でも吸気時にはⅡ音が分裂していて、つまりⅡAが先に、ⅡPが後に来る。このメカニズムは次のように説明される。
吸気によって胸腔内圧が低下→静脈還流量上昇→右室から肺動脈への血液上昇→駆出時間の延長→肺動脈弁の閉鎖が遅れる。故にⅡA、ⅡPの順になるのである。
吸気によって静脈還流量が上昇するメカニズムに興味のある方は
吸気時に静脈還流量が増加するメカニズム - 雑学者ワナビー 参照
固定性分裂とは何か
さきほど説明したように、本来は吸気時には肺動脈弁が閉まるのが遅くなるはずであるが、固定性分裂というのは呼吸でも吸気でもⅡ音の分裂間隔が変わらない、つまり間隔が固定されているという状態である。
具体的な疾患としては心房中隔欠損(ASD)が代表的である。なぜ心房中隔欠損で固定性分裂がおこるのか。吸気時と呼気時に分けて説明したい。
吸気時には胸腔内圧が陰圧となり、肺が拡張されるだけではなく、肺静脈も広がり、血液が肺側に貯まるようになる。それゆえ、左心房への静脈還流量は低下する。ASDでは左房から右房へのシャントがあるので吸気時には静脈還流が増える。この時には肺の血管が肺と一緒に膨らんでいるので、肺の血管が血液を蓄え、左房に戻る血液量は減少する。つまり、左房から右房へと流れる血液量も減少して増えた静脈還流量と相殺される。
整理すると:
一般的には吸気時に静脈還流量↑
しかし右左シャントが↓
トータルで相殺
一方で、一般的に呼気時には肺静脈還流量は減る。しかし、この時胸腔内圧が陽圧になり、肺と肺血管はしぼんでいるので、肺から左房に戻る血液量は増加する。故に左房から右房へとシャントを通じて出る血液量は増加し、減少していた静脈還流量と相殺しあう。
整理すると
一般的には呼気時に静脈還流量↓
しかし右左シャント↑
トータルで相殺
呼気時でも吸気時でも右室から肺動脈へと向かう血液量、つまり肺動脈弁を通過する血液量は等しくなる。故にⅡpとⅡAの間隔は等しくなるのである。