つねぴーblog@内科専門医

アウトプットが趣味です。医学以外の事も投稿するやもしれません。名前は紆余曲折を経てつねぴーblogに戻りました

移転しました。

食後に果物を食べてはならないは本当か?

この間、「果物は食後にとってはならない。できれば朝一番で取るのが最も良い。」というような話を聞いた。初耳だったので面白い話だな、と思って詳しく調べて見た。


生のりんごをむいておくと、すぐに色が変わります。
これは酸化が始まっていることを意味します。
つまり、腐り始めた食べ物と言えます。
ですので、果物のスカベンジャー効果を期待するなら、
生の新鮮なうちに食べ、なおかつ胃の中でも早く消化させることが大事です。
食後のデザートに果物を食べていますか?
胃の中に食べ物がまだ消化される前に、果物を入れてしまうと、
どうなるでしょう?
胃の中で果物がなかなか消化されずに酸化します。
少しずつ腐ってしまうのです。
腐った果物を消化して、体に良い事は、ないです。
どんなに新鮮な果物でも、食後すぐに食べたとしたら、
胃の中で腐ってしまい、逆効果なのです。
果物は、食前30分以上前に食べるか、
食後1時間以上経ってから摂取する方法が理想的です。

確かに普通に読んでるとフムフムと思ってしまうかもしれないが、いろいろとおかしな点をみつけた。


・まず、酸化=腐るという考えは間違い。

酸化とは何だろうか。高校で化学をやった方なら知ってるはずだが、酸化還元反応の酸化である。
食べ物を食べたときに、そこに含まれるタンパクやグルコースあるいは脂肪などは分解されていくのだが、このことを酸化と呼んでいるのである。細かい化学式は割愛する。逆に体内においてグルコースがグリコーゲンなどに合成されることを還元などと呼ぶこともある。(大学の生化学などで習うことなのだが)
砕いて言うと、酸化=分解であって腐敗とは意味が違う。

では腐敗とは一体何なのであろうか。簡単に言うならば微生物による分解なのである。主に微生物によって分解されて硫化水素やアンモニアなどの悪臭を放ったりする場合を腐敗と呼び、人間にとって都合の良い分解のされ方だと概ね発酵と呼ぶ。しかしながら胃では胃酸が分泌され微生物は殺されるので、腐敗細菌も存在し得ない。腐敗とは生体外で起こる分解反応のことなのである。




・スカベンジャー効果とは何か

スカベンジャー効果とは何かご存じだろうか。自分は初めて聞いたので調べて見ると、”活性酸素を除去してくれる物質”らしい。
活性酸素というのは食べ物を消化したりするうちに発生する酸素の一種なのであるが、これは体に悪い働きをしていて線虫などの実験では活性酸素によって大幅に寿命が縮むなどの報告もある。線虫と人間は違うだろといわれればそうかもしれないが、少なくとも活性酸素は体によろしくないのは事実であろう。心臓病などとの関連性も指摘はされているが、活性酸素との直接的な因果関係の証明は難しく、まさに基礎研究の進行している分野である。(また、活性酸素は免疫反応の過程でも生じて侵入細菌を殺してくれるという良い面もある)
その活性酸素を除去してくれるのがスカベンジャーで、もっとメジャーな用語を使うならば抗酸化物質である。

果物の抗酸化作用は割と有名かもしれない。正確に言うと、果物に含まれているビタミンに抗酸化剤としての役割があることが知られている。
代表的な例を挙げるならば、ビタミンE、C、β−カロテンなどがある。(最近よく耳にするポリフェノールなども抗酸化物質である)
上述の文章によると、これらのビタミンが腐ってしまい、腐った物を消化するのは体に良くないという論調になっているが、それははなはだ疑問である。
そもそも腐るわけではないし、ビタミンが分解されて有毒になるなどという話は聞いたこともない。
多くのビタミンは小腸から血液中に吸収され、全身に行き渡り、数時間で尿として排出されると言われている。

まだ書きたり無いこともあるが、ひとまずまとめておくと、
食後に果物を食べてはいけないという話はトンデモ話であると思う。また後日追記します。
おかしな点がありましたらご指摘お願いしますm(ーー)m