喀痰の性状と原因菌@肺炎の診断
肺炎を疑うときに原因菌を調べる目的で喀痰培養を行う。
が、培養結果を待たなくてもある程度喀痰の色で原因を推定することが可能である。
・鉄さび色→肺炎球菌
・イチゴゼリー状→クレブシエラ
・オレンジ色→レジオネラ
肺炎球菌の喀痰(鉄錆色)

画像引用:http://www.slideshare.net/AbinoDavid/history-taking-14039185
クレブシエラの喀痰(イチゴゼリー様)

写真引用:Respiratory Tract Infections Flashcards | Quizlet
レジオネラの喀痰(オレンジ色)

肺炎において血液培養は必要か
肺炎において血液培養はどういう時に必要なのだろうか
血液培養で市中肺炎の原因菌を特定できたのはたったの7%で、エンピリックな抗菌薬が効かずに抗菌薬の変更が必要になったのはわずかに0.4%という報告がある。
市中肺炎において血液培養をするメリット…
・かなり正確に原因微生物を特定することが出来る。他には無い唯一の診断的検査。
・患者にはダイレクトには関係しないが疫学的データとしても大事。
・高齢者であれば熱源は本当に肺炎だけなのか?という担保
血液培養がそこまで推奨されない理由
・肺炎の血液培養の陽性率がかなり低い(7%)
・血培陽性でも抗菌薬治療が変更になる確率が低い
(参考 Ann Emerg Med,46(5):393-400,2005)
◯ではどういう時に血液培養をすればよいのだろうか?
・米国感染症学会のATSガイドラインでは「ICUに入室するような重症患者で血液培養は必須」 と提言され、ICUに入室しない症例でも必要であれ考慮するべきとされている。
・欧州のガイドラインでは「入院患者全例」への採取を推奨しているが、外来治療可能例に対しての血液培養は推奨していない。
・アメリカ市中肺炎ガイドラインでは次のような場合に血液培養を行うべきと書かれている。(参考:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17278083)
【市中肺炎における血液培養の適応】
・アルコール多飲患者
・空洞形成のある肺炎
・肝不全患者
・脾臓摘出者
・胸水貯留の患者
・肺炎球菌尿中抗原陽性
・白血球減少(重度の肺炎では白血球減少する)
結局何を基準にすれば良いのか迷ってしまうところではあるが、重症もしくは重症化しそうな肺炎および上記の基準のいずれかに当てはまる症例においては全例血液培養施行。それ以外の軽症肺炎であれば血液培養施行しても良いが、施行しなくてもガイドライン上非難されることはないはずであるが、現実的に入院患者には全例血液培養施行しろというDrは多いので施設基準や空気に合わせる。
肺炎における血液培養陽性率は7%と高くないので空振りに終わってしまうかもしれないが、もし陽性になった場合は菌血症として治療が必要になるし、喀痰がきちんと排泄できずに喀痰培養陰性になってしまう可能性もあることからやはり外来通院可能な軽症肺炎でない限りは血液培養をとっておいた方が安全なのかもしれない。
関連エントリ:肺炎の入院基準ADROPとは - とある研修医の雑記帳
肺炎尿中抗原の感度と特異度
尿中抗原の感度と特異度
尿中抗原検査とは肺炎に感染することで尿に出る莢膜多糖抗原をイムノクロマトグラフィーで検出することで肺炎の有無を調べる検査方法。
肺炎球菌尿中抗原→感度:70%、特異度:80〜100%
レジオネラ尿中抗原→感度:74%、特異度:99.1%
{参考:感度と特異度からひもとく感染症診療のDecision Making}
尿中抗原検査の利点
・特異度が高い(確定診断に有用)
・レジオネラの確定診断はほぼ尿中抗原しかない。
・抗生剤使用後でも検出可能
・15分程度で迅速に検査可能
尿中抗原検査の欠点
・感度が低い(スクリーニングとしては使えない)
・偽陽性がある(肺炎治癒後も3ヶ月ほど陽性になる可能性がある)