味覚障害の鑑別
・「最近味がわからない…」という患者に遭遇したら…
鑑別としては
・亜鉛欠乏、薬剤性、感冒後(COVID19罹患後)、口腔内の問題(歯周病・舌炎、唾液分泌異常)、特発性などが考えられる。
診るポイント
・感冒後ではないか
・口腔内に問題はないか(歯周病、舌苔、舌炎など)
・唾液が減ってないか(薬剤性、シェーグレンなど)
・味覚障害を起こす薬剤を飲んでないか
・亜鉛欠乏をきたす基礎疾患がないか(DM、肝障害、腎障害、消化管疾患など)
・脳血管障害の有無(既往歴、他の神経脱落所見)
・耳鼻科の術後ではないか(扁桃摘出後:舌咽神経障害、中耳炎手術後:顔面神経障害)
⭕亜鉛欠乏
味覚を感じるのは舌の表面にある味蕾。味蕾は味細胞から構成されており、新陳代謝が活発で1ヶ月のスパンで新しく生まれ変わってくる。味細胞の再生には亜鉛が必要であり、亜鉛不足であると味細胞の機能低下が起こり、味覚障害に至る。
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_552.html
なぜ、亜鉛欠乏が生じるのか。摂取不足だけでなく、例えば糖尿病であれば重症度に応じて尿中への亜鉛排出量が増加するため血中亜鉛濃度は低下する。肝障害では消化管からの吸収障害なども起こる。
⭕薬剤性
降圧薬、冠拡張薬、鎮痛・解熱薬、高脂血漿治療薬、肝治療薬、消化性潰瘍治療薬、甲状腺疾患治療薬、パーキンソン病治療薬、抗菌薬、 抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗悪性腫瘍薬、抗精神病薬、抗アレルギー薬、痛風治療薬、インターフェロンなど。
・薬剤性味覚障害のメカニズムとして,
①薬剤が亜鉛とキレート結合を形成することによる亜鉛欠乏
②抗コリン作用による唾液分泌の抑制
③味覚神経への影響などが
考えられているが一定の見解は得られていない。
⭕感冒後・コロナウィルス感染症後
ウィルス感染後の嗅覚障害により、味覚障害が起こることがある。
急性期〜亜急性期であれば原因として副鼻腔炎が起きていないか考える。
コロナ感染症の場合はかなり多くの症例で味覚障害(ほとんどが嗅覚障害に伴う味覚障害)が報告されているが、感染リスクを考慮して、2 週間以上経過しても改善しない場合は,嗅覚障害,味覚障害の 診断が行える耳鼻咽喉科専門医を紹介する.
⭕口腔・唾液腺疾患に伴う味覚障害(舌炎、唾液分泌障害、歯周病)
唾液分泌の低下……加齢、シェーグレン症候群などによる
✅亜鉛欠乏の診断(by亜鉛欠乏症の診療指針2018)
✅亜鉛欠乏の治療;
亜鉛の多く含まれる食品としては牡蠣、カニ、レバー、牛肉、卵、ナッツ類などが挙げられる。
薬剤投与としてはポラプレジンク150mg/日(朝夕食後 分2)など。
*ポラプレジンク150mgには亜鉛34mgが含まれている。
ポラプレジンクが有効な症例では、内服6カ月以内に80%の症例が改善を示す。ポラプレジンクの内服期間が6カ月を過ぎるとその有効率は低下する。治療終了を検討する。
*亜鉛投与時の注意点
重大な副作用としては銅欠乏症がある。亜鉛によって銅の吸収が阻害されてしまうため。銅欠乏による汎血球減少症や貧血などがある。
亜鉛投与中は、定期的(数ヵ月に1 回程度)に血清亜鉛、銅、鉄を測定する。血清亜鉛値が250μg/dL 以上になれば、減量する。また、銅欠乏や鉄欠乏が見られた場合は、亜鉛投与量の減量や中止、または銅や鉄の補充を行う。
また追記します。