失神精査で行う検査一覧
失神精査で行う検査一覧
◯心エコー
必ずしも失神患者全例にやる検査ではないが、心雑音聴取や心不全徴候や心電図異常、心疾患既往などあれば絶対に必要。
評価ポイント
・大動脈弁狭窄症(AS):弁口面積や血流速度を評価。致死的疾患で重要。
・肺高血圧症:三尖弁逆流やTRPG評価。まれながら肺高血圧での失神も存在する。
・EF:EF低下や陳旧性心筋梗塞(asynagy):心室性不整脈を起こしやすい
・左房径:左房拡大があれば心房細動の存在が疑われる。
ホルター心電図や心電図モニターでAfの有無の評価必要。心房細動が洞調律化したタイミングで起こる徐脈頻脈症候群による失神の可能性を考慮する。
◯ホルター心電図(入院中であればモニター心電図)
・24時間連続で心電図を記録することによって不整脈の有無を評価する。
・1周間に1回ぐらい不整脈や動悸症状が出ている患者であれば24時間の検査で拾うことができる可能性がある。逆に1ヶ月に一度程度しか発作が起きていない場合ホルター心電図を施行しても空振りに終わる確率が高い。
◯運動負荷試験
・トレッドミル、エルゴメーター(自転車)、マスター負荷(階段の昇降)などがある。
・運動中の失神、もしくは運動直後の失神など若年者で運動誘発性の不整脈が疑われる場合は、最大の負荷をかけて試験する。
◯頭部CT,MRI
神経所見がなければ全例に施行する試験ではない。
神経所見がないにもかかわらず頭部画像を撮影するのはてんかんを疑うとき。
意識消失の前にしびれ症状や麻痺症状、もしくは痙攣があった場合などはてんかんによって意識を消失した可能性があるので頭蓋内を評価する必要が出てくる。もちろん、てんかんでも脳内に異常がなくて起こることもある。一方で頭蓋内に何かしらの病変があって二次的にてんかんが引き起こされることもあるのでやはり精査が考慮される。
◯頸動脈エコー
頭部CTやMRI同様に神経所見がなければ必要ない。
しかし一過性脳虚血発作(TIA)のような短時間の神経症状があった場合は施行する。
神経症状が皆無で意識消失した場合、その原因がTIAという可能性は非常に低い。
◯脳波
てんかんが疑われる場合は施行する。1回だけでは感度が低いので疑う時は繰り返し施行する必要がある。
◯冠動脈造影(CAG)
狭心症による不整脈発作が疑われる場合に行う。冠動脈CTで代用も可能。
腎機能が悪くて造影剤が使えない場合は心筋シンチグラフィでも良い。
◯EPS(心臓電気生理学的検査)
不整脈性失神を診断するために行う。しかし侵襲的な検査でもあるため原因不明の失神患者全員に行うようなものではない。
・徐脈性不整脈の検査:房室ブロックがある場合はAH時間(心房-His束時間)やHV(His-心室時間)の測定を行いペースメーカー適応を判断する。特にH-V時間が100msより延長している場合は房室ブロック出現のハイリスクである。
・頻脈性不整脈の検査:モニター心電図などで頻脈性不整脈が確認されている場合やLVEFの低下など低心機能が明らかであり心室性不整脈のリスクが有るときなどに行う。
注意点はEPSにて不整脈が検出できない患者でも失神が否定できるというものではない。不整脈があるにも関わらず不整脈の検出ができない場合は植込み型ループ式心電図モニターの使用を検討する。
◯チルト試験
神経調節性失神の有無を調べるための検査。チルト台と呼ばれるベッドを使用して長時間立位状態にして足に血液を貯留させて自律神経のバランスを崩して失神させる。
ガイドライン的にはチルト試験の適応は次の通り
1,外傷の危険が高かったり、職業上問題のある場合の単回の失神。
2,心原性失神が諸検査で否定的であるが失神を繰り返している場合
3,迷走神経反射の起こしやすさを明らかにすることが臨床的に有用である場合のチルト試験
◯植込み型心電図計(ループレコーダー)
上記精査でも診断がつかない失神に対して行う。小型の心電図系を前胸部皮下に植え込むことで長期間不整脈の有無を追跡できる。3年程度継続してモニタリングが可能。入院して心電図モニターすることでも不整脈の検出は可能だが、1年に数回程度しか起こらない発作の場合はそんな長期間入院続けるわけにも行かないのでループレコーダーは有用な手段。
編集中。また追記します。。