心嚢液が多量に貯留している場合は心タンポナーデを想起しなければならない。
が、心嚢液が少量であっても急速に貯留した場合は心タンポナーデになりうる。
何故か。
心臓を包んでいる心膜は左心系の拡張能に影響を与える。
心膜は伸展性に乏しい組織であり、心臓を拡張させようとする力が慢性的にある場合は心膜は進展していくが、急激な変化に対してはほとんど進展できない。
つまり、慢性心膜炎で心膜貯留があっても心不全は出現しないことがあるが急性心膜炎では拡張不全の症状が起こりやすい。急性心タンポナーデでは少量の心嚢液貯留でも心膜が進展できないため左室の拡張ができずに、心拍出量低下からショックに至ってしまう。