(文献)HFrEF患者が退院する時少しでもうっ血所見残存していると予後不良
一言)
文献からの覚書(論文のまとめではありません)
・本研究は心不全増悪(HFrEF)で入院した患者の臨床経過とうっ血所見(毎日観察)の予測値に関しての世界的に初めてのスタディである。
・うっ血所見(起坐呼吸、軽静脈怒張、浮腫)をそれぞれ4段階で評価して0−3点として合計9点で評価。退院時に何点となっていたか。
・心不全での入院患者は一般的な治療で症状がかなり良くなって体重も減少するが、BNP.NT-proBNPは非常に高い状態で退院となっていることが多い。
・予想外の結果の1つは聴診での肺ラ音はその他のうっ血所見の複合スコアと最も関係がなかったことである。矛盾しているようにも思えるが、今回の研究のうっ血複合スコアは頸静脈怒張や下肢浮腫などの右心不全の徴候で点数化しているものであり、肺ラ音の存在はその決して右心不全の重症度を正確に反映するものではない。
・臨床的なうっ血(clinical congestion)と血行動態におけるうっ血(haemodynamic congestion)の違い:臨床的なうっ血は呼吸苦や起座呼吸、軽静脈怒張が出現するが、血行動態におけるうっ血(haemodynamic congestion)は臨床的なうっ血症状の有無を問わず心臓充満圧の上昇で定義される。
・退院前に臨床的なうっ血症状が改善していても採血でBNPが高値というのは、血行動態におけるうっ血が残存しているからである。
・臨床的な心不全徴候を改善させたとしても、症状として現れていない血行動態上のうっ血の解除は不十分であると言える。また、退院時にBNPが高値であることは死亡率と心不全の再入院率の高さとの関係が指摘されており、全く良いことではない。
・レジストリーから言えることは40%以下の患者で退院時に心不全症状が残存し、退院時には体重がほとんど減少しないどころか上昇しているケースがある。つまり、臨床的なうっ血症状を緩和しきれていないことが心不全の再入院率の高さにつながっている可能性がある。退院時のうっ血所見は全死亡率および心不全の入院率と関係があった。
・退院時にどの程度うっ血症状が残存しているかは入院期間の長さとの負の相関にある。土地柄(医療体制など?)の影響をかなり受けておりアメリカではヨーロッパよりも入院期間は短く、そしてうっ血があるのに帰されてるケースがある。
・退院するときにうっ血症状が残存している患者はEFが低く、QRS幅が長く、BUNやCreが高くまたBNPやAVPなどの採血データも高くなっている傾向にあった。
・これまではうっ血所見の有無を基準に退院させていたが、これからは退院基準としてたとえば血行動態のバイオマーカーであるBNPや6分間歩行などを用いていくべきなのかもしれない。