めまい患者における眼振のミカタ
・救急外来受診患者の診察で重要なのは中枢性か末梢性かの鑑別。
・眼振の見方には3つのパターンがある。
1、注視下
2、非注視下(Frenzel眼鏡着用下で、頭位眼振を見る)
3、電気眼振計(ENG)記録による検査
この中で、救急外来受診患者に行うのは主に1。2と3は耳鼻科で行う。
(眼振記号の見方の復習)
必ず末梢性めまいと言えるような眼振はないが、逆にほぼ中枢性めまいと言える眼振はある。それは次の3つ。
1,注視方向性眼振
2,垂直性眼振
3,定方向性の純回旋性眼振
救急外来でこれらを認めたら脳卒中など疑い頭部CT/MRI必須と思って動く。
以下、それぞれについて。
◯注視方向交代性眼振(中枢性疑い!)
右を注視した時は右向きの眼振が、左を注視した時は左向きの眼振が出現するものを注視方向交代性眼振という。
これは末梢性めまいでは通常ありえない。末梢前庭障害による眼振は、左右の前庭入力の釣り合いが取れなくなり、眼球が片一方に引っ張られることで出現する。小脳や脳幹など中枢の障害では、眼位を保持するシステムが破綻することによって眼振が出現する。例えば右を注視しようと思っても、眼位を右に保持できなくて自然と正中に戻ってしまう。が、またすぐ右を向こうとして結果として右に行ったりまっすぐ見たりと右向き眼振となるのである。
脳幹や小脳などの中枢障害が疑われる。
◯純回旋性眼振で定方向性(中枢性疑い!)
右方視、左方視でも同じ方向の回旋性の眼振がみられる。
上図のように正中視でも回旋性眼振が認められたら下部脳幹、特に延髄の障害を疑う(延髄空洞症、ワレンベルク症候群など)。ワレンベルク症候群の急性期などでは眼振の方向は短時間の間に変化することがあるので注意。
◯垂直性眼振(中枢性疑い!)
常に下向きか、もしくは常に上向きの眼振を垂直方向性眼振という。
下向き眼振であれば小脳病変が疑われ、上向き眼振であれば延髄や中脳などの脳幹病変が疑われる。ただ、仰臥位であれば生理的に垂直方向眼振が診られることも有る。座位で垂直方向眼振があればほぼ間違いなく病的。
おまけ
◯水平・回旋混合性の定方向性の眼振(末梢性疑い)
主に末梢前庭障害でみられる。上の図のようにどの方向に注視していても眼振があれば症状強く、左右一方向の時だけ眼振出現していれば症状軽い。正面視でも眼振あれば嘔気やめまい症状が強いことが多い。また、難聴、耳鳴り、耳閉塞感などの随伴症状をもっていることも多いのでよく問診する。以下、末梢性めまいの特徴。
BPPV:秒単位のめまい。頭囲変換時に潜時を伴って生じる。
メニエール病:時間単位で持続するめまい。耳鳴りや難聴が反復する。
突発性難聴:突然のめまい+難聴
前庭神経炎:日単位で持続する強いめまい。耳鳴りや難聴は伴わない。
また追記します。