繊維自発電位(fibrillation potential)と陽性鋭波(positive sharp wave)について
繊維自発電位(fibrillation potential)と陽性鋭波(positive sharp wave)について
筋電図検査におけるfibrillation potential、positive sharp waveは共に急性脱神経所見である。これらはいずれも下位運動ニューロンの障害もしくは筋疾患によって筋細胞膜が不安定になることによって出現すると考えられている。病的意義は同じであり、それぞれ単独で出現するよりも一緒に出現することのほうが多い。
イメージとしては下位運動ニューロン障害によって神経支配がゆるくなった筋繊維が、培養皿上の心筋細胞のようにポッ、ポッ、と自発的に興奮する様子を筋電図で捉えたものである。ALSのような下位運動ニューロン障害や多発筋炎のような筋自体の疾患でも生じうる。
【メカニズム】
何らかの原因で脱神経が起こると軸索の終末分枝が脱神経2~3日後から退化しはじめ、1週間ほどで消失する。終末が消失すると終板に限局していたアセチルコリン受容体が終板外にもあらわれるようになり、筋線維膜全体がアセチルコリンに高い感受性を示すようになる。脱神経後数時間より静止膜電位が低下し始め、約二週間の経過で15~20mV低下する。この膜電位の低下が膜電位の波動性動揺を起こし、電位が発火レベルに達すると活動電位が生じ、線維攣縮が起こる。これが線維自発電位(fibrillation potential)であり、活動電流が筋線維から周辺の組織に広がっていく過程を記録したのが陽性鋭波(positive sharp wave)と考えられている。
fibrillation potentialとpositive sharp waveの一例
参考:http://slideplayer.com/slide/5854745/