ペニシリン不応の扁桃炎でマクロライドを使う理由
急性扁桃炎は主に溶連菌感染症により発症することが知られており、長い間ペニシリンが治療のゴールドスタンダードとして用いられてきたが、近年ペニシリンの効かないケースもしばしば報告されている。
ペニシリン不応の理由として次のような理由が挙げられている。
・ブドウ球菌やモラクセラ・カタラーリスの産生するβラクタマーゼによりペニシリンの分解
・家庭内感染による再感染
・溶連菌の上皮細胞内に侵入するため、ペニシリン系抗菌薬が細菌に届かない
以前までは細胞外感染すると考えられていた溶連菌であるが、FbaA(フィブロネクチン結合蛋白)などの表面タンパクにより上皮細胞に付着した後に細胞内に侵入して自然免疫やペニシリンの攻撃から逃れることが出来ていると考えられている。
【細胞内侵入のイメージ】
画像参考:http://web.dent.osaka-u.ac.jp/~mcrbio/kenkyuuterao1.html
以上のような理由から、ペニシリンの効かない溶連菌感染症では細胞内移行性のある抗菌薬マクロライド(アジスロマイシンなど)が用いられる。また、アジスロマイシンは細胞内移行性に優れるだけでなく、細胞外薬剤が覗かれた後でも細胞内の薬剤濃度が長時間維持されるという特性を持っているために、細胞内寄生菌に奏功すると考えられる。
◯ただ、ルーチンでのマクロライド投与は推奨されない
ペニシリンの効かない溶連菌感染症にはマクロライドの効果は期待されるものの、近年マクロライド耐性の溶連菌が増えてきていることも有り、第一選択薬での投与は推奨されない。βラクタムアレルギーやペニシリン不応などの場合に用いるのが一般的である。