血清浸透圧と張度の違い
浸透圧と張度の違い
血清浸透圧の定義:溶液内のすべての溶質濃度を表すものである。
血清浸透圧の予測式
=2×Na(mEq/L)+Glu(mg/dL)/18+BUN(mg/dL)/2.8
血清浸透圧は上の予測式の通り、Na、グルコース、BUN(尿素窒素)の3つで規定されている。浸透圧を規定する3つの物質であるが、Naとグルコースは細胞膜を移動できないのに対して、尿素窒素は細胞膜を自由に通過できるという点で異なる。
つまり、血管にNaを加えると、Naは細胞内に自由に入ることができないため細胞内と細胞外の浸透圧バランスが崩れる。すると細胞内の水は細胞外に出て血管内のNa濃度を薄めようとする。一方で、尿素窒素を血管に加えると、尿素窒素は細胞膜を自由に通過することのできる物質であるので細胞内と細胞外に均等に分布し、浸透圧バランスは変わらないので水のシフトも起こらない。
ということで、溶質濃度を意味する浸透圧とは別に、水の移動に関係する圧力を張度(有効浸透圧)として別に定義されている。
張度=2×Na(mEq/L)+Glu(mg/dL)18
上の式から分かる通り、張度を規定するのはNaの方がずっと大きい。(もちろん糖尿病性ケトアシドーシスなどで血糖値が異常に高い場合は別であるが…。)
【NaとBUNの移動のイメージ】
画像参照:https://plaza.rakuten.co.jp/bonolovescat/diary/200812210000/
臨床的にどのような意味があるのか…
張度、つまり水を引っ張る力はほとんどがNa濃度が規定しているということになるため輸液の際に細胞外脱水があった場合はNaを多く入れるような輸液(つまり生理食塩水)を入れれば血管内ボリュームを最も改善させることができるというように考えることができる。