急性膵炎の検査におけるアミラーゼとリパーゼの違い
急性膵炎の検査におけるアミラーゼとリパーゼの違い
アミラーゼは膵臓や唾液腺で分泌される消化酵素であり、膵臓以外の唾液腺の異常でも数値は上がる。リパーゼは脂肪を分解するための消化酵素であり膵臓の異常でより特異的に上昇する(ともに腎臓で排泄されるので腎不全でも上昇は見られる)。
ともに飲酒や食事の影響により値は上昇し、基準値上限を超えているから急性膵炎といえるものではない。具体的にどのぐらいの数値から急性膵炎を示唆するのだろうか。
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「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」では
急性膵炎に対する感度特異度は以下のように紹介されている。
アミラーゼの感度:91.7-100%,特異度71.6-97.6,陽性尤度比:3.5-40
リパーゼの感度:86.5-100,特異度84.7-99,陽性尤度比:6-87
リパーゼのほうがアミラーゼに比べて診断能が高い結果である。
またその他にも
アミラーゼの基準値上限3.1倍の感度:60.9,特異度100,陽性尤度比∞
リパーゼの基準値上限3倍の感度:55,特異度99,陽性尤度比55
との論文も紹介されている。
結論としては、
急性膵炎に対してアミラーゼよりリパーゼの方が診断能力が高い。アミラーゼ、リパーゼはともに正常上限の3−5倍ぐらいまで上昇していれば急性膵炎に対して特異的と言えるが、正常値上限の1−2倍以下の軽度上昇であれば膵炎を示唆するが偽陽性の可能性もあるので注意が必要である。
リパーゼとアミラーゼを一緒に測る必要はない(急性膵炎に対してはリパーゼはアミラーゼの上位互換)との報告もあるが費用的コストも時間的コストもそう変わるものではないので膵炎を疑うのであれば両方測定しておいた方が精神的には安心できるようにも思える。
元ネタ論文1,Diagnosis of acute pancreatitis: a proposed sequence of biochemical investigations. - PubMed - NCBI
元ネタ論文2、