アニオンギャップを計算する意義
アニオンギャップの計算とその意義
◎アニオンギャップの式の導出
アニオンとは陰イオンのこと。ギャップとは差のこと。アニオンギャップとは陽イオンと陰イオンの差という意味で用いられる。
体内において陽イオンと陰イオンのそれぞれの合計は一緒。
陽イオンとして圧倒的に多いのはナトリウム!(他の陽イオンとしてはK+Mg2+などがある) 簡単に書くと
陽イオン=Na+その他の測定できない陽イオン
陰イオンとして圧倒的に多いのはCl-とHCO3-!
(他の陰イオンとしてはリン酸塩や硫酸塩、アルブミンなどもある)
同様に簡単に表現すると
陰イオン=Cl-+HCO3-+その他の測定できない陰イオン
よって次の式が成り立つ。
Na+測定できない陽イオン=Cl-+HCO3-+測定できない陰イオン
アニオンギャップ=
測定できない陰イオンー測定できない陽イオン≒
Na-(Cl-+HCO3-)となる。
アニオンギャップの基準値は10〜14mEq/L。平均12mEq/L
☆ちなみに、血液ガス分析器での電解質は全血での測定であり、いわゆる一般採血の電解質の値とは異なるため、本来AGは一般採血の電解質で計算するべきである。
しかし、救急外来などにおいては血液ガス分析の結果はすぐに判明するため、
イラスト引用:http://blood-gas.com/aniongap/59/
◎アニオンギャップ測定の意義
一般的にAGの計算が必要なのは、血液ガスで代謝性アシドーシスの時。アニオンギャップを測る理由は代謝性アシドーシスの原因の鑑別のためである。代謝性アシドーシスは動脈血液ガスでpH、PaCO2,HCO3-から判断できるが、それを引き起こす原因は様々ある。AGを計算し、開大しているか正常なのかわかればもう一歩踏み込んだ鑑別が可能になるのである。
追記:
AGの開大は代謝性アシドーシスの鑑別のためと書いたが、ICU入院など重症の患者においては複数の酸塩基平衡の異常が併存することがある。例えば代謝性アシドーシス+呼吸性アルカローシスなど。よって、血液ガス分析でどのような酸塩基平衡異常であってもアニオンギャップは計算してみる意義はある。その結果開大していたらAG開大型代謝性アシドーシスの併存の有無を調べることができる。(AGが開大していたらpHが正常であっても必ず代謝性アシドーシスが存在する)。
◎代謝性アシドーシスの原因
・アニオンギャップ正常な場合
下痢(消化液とともにHCO3-が失われる)
生理食塩水の大量投与
アセタゾラミド投与、尿細管性アシドーシスなど
・アニオンギャップ上昇の場合
敗血症・乳酸アシドーシス・循環不全(乳酸)
飢餓性ケトアシドーシス(ケトン体)
糖尿病性ケトアシドーシス(ケトン体)
アルコール性ケトアシドーシス(ケトン体)
腎不全・尿毒症(リン酸)
中毒(サリチル酸、メタノール)
◎おまけ)アニオンギャップ上昇の語呂合わせ
「KUSSMAL」
Ketoacidosis ケトアシドーシス
Uremia 尿毒症
Shock ショック
Salycilate サリチル酸中毒
Methanol メタノール中毒
Alchol アルコール中毒
Lactate 乳酸アシドーシス