麻酔の急速導入、迅速導入、緩徐導入の違い
麻酔の急速導入、迅速導入、緩徐導入の違い
◯急速導入
急速導入とは十分に酸素化を行ってから静脈麻酔薬と鎮痛薬を用いて患者を眠らせた後に筋弛緩薬を投与して気管挿管を容易にする一連の操作のことを指す。
鎮静と鎮痛で呼吸抑制、循環抑制が起こるために事前の十分な酸素化および昇圧薬の準備が必要。静脈麻酔薬を用いるので静脈路確保は必須であり、静脈路が確保されていない患者や協力の得られない患者(小児など)では急速導入は不可能である。
急速導入のメリット:短時間で終わるので麻酔前の不安、恐怖を感じる時間が少なくて済む。またそれに伴う交感神経の緊張およびその合併症リスクも低くなる。
急速導入のデメリット:静脈から鎮痛薬、鎮静薬を投入するので血中濃度は急速に上昇し、呼吸抑制も速やかに生じる。よって酸素化が不十分であるとPaO2もすぐに低下してしまう。
◯迅速導入
迅速導入とは誤嚥リスクの高い患者において麻酔導入後速やかに気管挿管を行うこと。
流れとしては事前の十分な酸素化、静脈麻酔薬の投与、筋弛緩薬の投与、輪状軟骨圧迫(食道圧迫)、気管挿管の順に行う。ポイントはマスク換気を行わずにすぐに気管挿管をするという点にある。挿管してしまえば誤嚥リスクの高い患者が誤嚥する率を下げることが可能。
◯緩徐導入
緩徐導入とは吸入麻酔を用いた麻酔導入であり、小児など協力が得られずに静脈路を確保できない場合に選択される。各種モニター装着後、酸素3L/分、亜酸化窒素6L/分を1〜2分間投与し、それから徐々にセボフルラン濃度を上昇させていく。およそ5−8%で入眠する。
入眠してから静脈ラインを確保し、必要に応じて鎮静薬、鎮痛薬、筋弛緩薬の投与を行う。