腸閉塞とイレウスの違い・鑑別
✅腸閉塞とイレウスの違い
日本において腸閉塞とイレウスは同じように「腸が詰まった」というような意味で混同されがちであるが欧米では異なる言葉として使われている。日本の医学用語としては麻痺性イレウス、単純性イレウス、絞扼性イレウスなどがあるが、この中で厳密にイレウスなのは麻痺性イレウスだけである。(急性腹症ガイドライン2015でも指摘されてる)
英語版ウィキペディアによると
Ileusとは…
「イレウスは腸蠕動不全による腸管の運搬機能障害である。腸管の弛緩や麻痺であり,開腹手術でみられ(術後イレウス),急性膵炎や腹膜炎のときにも生じ,聴診で腸音を聴取しない。腸閉塞とは区別して使われる。」などと説明されている。
一方で腸閉塞は英語でmechanical obstructionと呼ばれている。
💡「ここが詰まっています」と閉塞している箇所を指摘できる病態を腸閉塞と呼び、閉塞部位がなく腸管がびまん性に拡張しているだけであればイレウスと呼ぶ。実際の臨床でイレウスが見られる頻度は腸閉塞に比べるとかなり少ない(イレウスの原因としては膵炎や腹膜炎などがある)。
💡イレウスは状態であって病名でない。何かしらの原因によってイレウスという状態になってしまっているのである。
機能的イレウス(麻痺性イレウス)→イレウスの表現で正しい
機械的イレウス(単純性イレウスor絞扼性イレウス)→正しくは腸閉塞と呼ぶ。
✅腸閉塞とイレウスの鑑別
・腸閉塞とイレウスは区別するべき病態であるが、問診と身体所見だけでは区別が難しいことが少なくない。
・イレウスの原因としては急性膵炎、消化管穿孔、腸管壊死などがあるが、局所的な症状が目立つことが多い。一方で腸閉塞であれば痛みがびまん性に腹部全般的にあることが多いというのも鑑別の参考になる。また、麻痺性イレウスではパーキンソン病などの神経変性疾患の既往なども参考情報となる。