急性冠症候群(ACS)疑いへの対応@救急外来
心筋梗塞、狭心症疑いへの対応@救急外来
胸痛患者においていつACSを疑うか。以下のポイントに分けて考える
◯痛みのOPQRST
◯リスク因子
◯血液検査
◯心電図
◯問診(痛みのOPQRST)
発症様式:突然発症(sudden onset)か急性発症(acute onset)か
→発症の時何をしていたか答えられるか)
痛みの場所:ACSの場合は痛みをピンポイントで示せずに漠然としていることが多い。指一本で示すことが出来たらACSの可能性はかなり低くなる(もちろん例外もある)
痛みの性質:
ACSらしい痛みとは:圧迫感、肩や腕への放散痛、労作時の痛み
ACSらしくない痛みとは:体位によって痛む、触診にて再現できる、突き刺すような痛み
痛みの時間:30分以上持続したら心筋梗塞、それ以下なら狭心症と教科書的には分類される。
寛解・増悪因子:痛みが呼吸によって変動する場合、胸膜性の胸痛を疑う(肺炎、気胸、心外膜炎、肺血栓塞栓症など)
◯冠危険因子
・冠動脈疾患の家族歴
・喫煙歴
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・慢性腎臓病
◯血液検査
心筋バイオマーカーを測定する。
→トロポニン、CK、CKMB、心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)
問題はこれらは心筋梗塞直後に出現するとは限らず、ある程度の時間幅を見て経過を追わなければならない。
・トロポニン、CKMBは発症後4時間以上経過してから上がってくる
・心臓型脂肪酸結合蛋白は発症直後から上昇する。が、特異度は低い。
関連記事:心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)とは何か - とある研修医の雑記帳
【ST上昇型ACSガイドライン(2012)より引用】
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_kimura_h.pdf
◯心電図
心筋梗塞の心電図変化
特異度、陽性尤度比ともに高いのはST上昇、異常Q波でありこれらがあれば確定的。
他にもST低下、T波陰転化、伝導障害なども心筋梗塞を強く示唆する所見。
(おすすめ論文)心筋梗塞でどんな心電図変化が起こるか→The rational clinical examination. Is this patient having a myocardial infarction? - PubMed - NCBI
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(まとめ)
心筋梗塞の診断は1つの所見からではなく様々な所見を組み合わせて総合的に行われる。胸痛、トロポニンI、心電図変化(ST上昇、異常Q波)の3項目のうち2つ満たせばかなり確定的。また、1項目しか満たさなくとも時間が経ってから所見が変化することがあるので救急外来においては少しでも疑われたら帰宅させずに経時変化を追うことが重要である。
追記編集します。