移行帯の変化とそのメカニズム
心電図における移行帯とは
健常人の胸部誘導においてR波はV1からV5にかけて徐々に大きくなり、V6で少し小さくなる。S波はV2誘導で最も大きくなり、V3からV6にかけて少しずつ小さくなる。
R波とS波の高さが等しくなっているところを移行帯という。(R/S=1)
(↓正常な移行帯:V3誘導でR波高とS波の深さがちょうど同じになっている)
✅反時計軸回転の一例:↓左からV1誘導〜V6誘導と並んでおり、V2誘導でR波とS波の深さが同じ移行帯になっている
✅時計軸回転の一例:左からV1-6誘導と並んでおり、左から5つめのV5誘導でR波とS波の深さが同じになっている。V5誘導に移行帯がある。
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1938
正常の移行帯はV3ーV4の間にある。移行帯がV2側にずれていることを反時計方向回転または右方移動(患者の右手側)といい、移行帯がV5誘導側にずれている場合を時計回転または左方移動(患者の左手側)という。が、健常人でも移行帯の変化が見られることがあり病的意義は少ない。移行帯変化の評価は他の心電図異常と合わせて行われる。
◯反時計軸回転(右方移動)の原因と他の心電図異常
①右室肥大(右室が肥大すると、その分右室の起電力が上がる=右室側であるV1誘導のR波が増高し、反時計軸回転となる。その他の心電図所見として、右軸偏位、右房拡大、右側胸部誘導での陰性T波)
②完全右脚ブロック(QRS時間延長、V1,V2誘導でrSR’パターン)
③後壁梗塞(後壁の異常Q波のミラーイメージとしてV1誘導のR波が高くなり、反時計軸回転となる。)
◯時計方向(左方移動)の原因と他の心電図異常
・時計軸回転が起こるメカニズムは、左室前壁の起電力の低下あるいは左室の後方への物理的な移動などが関与している
急性肺塞栓(胸部誘導での陰性T波の出現が特徴的)
慢性肺疾患(肺の拡張によって心臓の位置が変化して時計方向に回転する。Ⅰ誘導での低電位差、肺性P波なども特徴)
前壁中隔心筋梗塞(V1-V4誘導での異常Q波も特徴。)
右室拡大(左室の後方への圧排によって、時計方向回転を呈する)
参考文献:心電図トレーニングクイズ、心電図パーフェクトマニュアル