急性の下痢へのアプローチ
”急性の下痢”へのアプローチ
下痢とは何らかの原因によって消化管の機能が過剰に亢進してしまっている場合に起こり、原因部位によって大腸型腸炎と小腸型腸炎に分けられる。
大腸型の腸炎は炎症性の腸炎とも呼ばれ、腸管粘膜の障害によって起こる。→血が出ることが多い。
小腸型の腸炎は非炎症性であり、毒素による腸管分泌が促進することによって起こる→血は出ずに水溶性の下痢であることが多い。
コンテンツ
・大腸型腸炎と小腸型腸炎の違い
・急性下痢患者への問診
・いつ検査が必要か
・何の検査が必要か
・治療
大腸型腸炎(炎症型腸炎)の特徴
・発熱、強い腹痛
・1日8〜10回の頻回の出血性の下痢
・渋り腹(激しい便意をきたすが便はほとんど出ない)
・主な原因:サイトメガロウィルス、カンピロバクター、サルモネラ、O157型大腸菌、エルシニア
小腸型腸炎(非炎症型腸炎)の特徴
・多量の水様便、嘔気。
・腹痛、発熱は軽度
・出血性の下痢となることは少ない
・周囲で同様の症状あり(ウィルス性)
・主な原因:ウィルス(ロタウィルス、ノロウィルス)、細菌(コレラ、黄色ブドウ球菌、大腸菌(旅行者下痢症)、原虫、薬剤性
■急性の下痢患者への問診
・食事歴:過去一週間遡って聞く。パーティーなどイベント毎がなかったかも聞くと患者も記憶を遡りやすい
・内服歴:抗菌薬を過去三ヶ月使用してなかったか。クロストリジウム・ディフィシルの除外は必要
・性交渉歴:性感染症による赤痢アメーバでは下痢をきたす。またAIDS患者であれば免疫力低下による日和見感染を疑う。
■下痢患者への検査
いわゆる腸炎の場合ほとんどが自然治癒するために検査は必要ない。が、次の場合には何も検査せずに帰宅はさせるべきではない。
【いつ検査が必要か】
・高齢者
・38.5度以上の発熱
・血便
・脱水(口渇、頻脈、腋窩乾燥、口腔粘膜乾燥、尿量減少)
・酷い腹痛
・衛生状態の悪い国への海外渡航歴あり
・基礎疾患あり(がん患者、免疫力低下など
【何の検査をするか】
・便培養
・血液培養
・便中白血球(陽性なら大腸型腸炎を疑う)
・便潜血(ヒトヘモグロビン)
・便グラム染色(gull-wing様のグラム陰性桿菌を探す:カンピロバクター)
・(10日以上下痢が続くようであれば)寄生虫、寄生虫卵検査
・(同性愛者であれば)アメーバ赤痢
・(血便が10日以上続くようであれば)大腸内視鏡
【治療】
・点滴(高齢者や脱水高度、基礎疾患ありなど検査が必要な症例では点滴もしておく
・水分補給(スポーツドリンク等で頻回の水分補給を行うように指導。糖分はNaの吸収を促進するので大事)
・ロペミン®(ロペラミド塩酸塩)
→下痢止め。血性下痢では用いない。
・ビオフェルミン(整腸剤)
→エビデンス少なめ。
・抗菌薬:シプロキサン®
→赤痢菌、カンピロバクター、サルモネラを疑うとき(38.5度以上の発熱、渋り腹、血便)。O157 では菌体内部の毒素放出によって症状悪化との報告もある。
また追記・編集します…。
参考文献
・ジェネラリストのための内科外来マニュアル
・ER実践ハンドブック
・UCSFに学ぶできる内科医への近道
など