破傷風ワクチン接種の適応
破傷風ワクチン(破傷風トキソイド)接種の適応
■破傷風とは
嫌気性菌であるclostridium tetani(破傷風菌)が産生する神経毒素によって全身の強直性痙攣や弓なり反張をきたす重篤な疾患である。破傷風菌は芽胞の状態で土壌に生息しており、皮膚の創傷面から感染する。嫌気性菌であるため空気の触れない密閉された環境で増殖しやす行く、刺し傷など感染リスクが高い。創傷感染から1〜3週間で開口障害や舌のもつれなどの初期症状が出現する。
■破傷風ワクチンについて
破傷風ワクチンは一度の投与だけでは免疫を得ることが出来ない。
初回接種(4−8週間隔で2回)、追加接種(初期接種後6−18ヶ月に1回接種)の合計3回のワクチン接種をすることで発症を防御できる抗体を獲得することが出来る。これが所謂基礎免疫。日本ではDPT三種混合ワクチンとして接種されている。
一度この状態になると時間が経って抗体価が低下してもトキソイドの追加接種をすると数日で抗体価を急上昇させることが出来る。抗体価が維持されるのはおよそ10年と言われているので10年に一度の追加接種で定期的に抗体価を上昇させることが推奨されている。
外傷でER受診した患者にトキソイドワクチンを打つのは元々基礎免疫を持っている(つまり幼少の頃などに3回の予防接種を受けている)ことが大前提である。
が、日本で定期接種になったのは1968年からで、それまでは任意接種で2割ほどの人しか接種していなかった。
興味深いことに、日本での破傷風の発症患者の9割が1968年以前に生まれた方である。つまり幼少時に破傷風ワクチンを摂取できなかった世代が選択的に発症しているというのがわかる。破傷風ワクチンは終生免疫ではなく前述の通り10年は持続するがそれ以降では効果が低下して破傷風を完全に防ぐことができない。故に10年に一度は追加接種が必要である。
破傷風予防ガイドラインによれば…
・破傷風の危険の高い傷で最終接種から5年以上経過
・破傷風の危険の低い傷で最終接種から10年以上経過
の場合に適応となる。
(なお、破傷風になりやすい傷とは深い刺創、動物咬傷、汚染の強いもの、創傷部位の血流の低下、浸軟した裂創など)
免疫の持続期間から考えれば10年に一度の定期的な接種が望ましいが、現実問題として何の怪我者ない人が接種するというよりも、怪我して医療機関を受診したタイミングで予防的に接種してもらうという方が一般的である。
煩雑なのでまた編集します。。