サリドマイドの作用機序〜多発性骨髄腫治療薬〜
■多発性骨髄腫とは
多発性骨髄腫とは骨髄において形質細胞が単クローン性に増殖するリンパ系腫瘍である。
症状としては以下のものが代表的。
・腰背部痛などの骨病変
・骨髄機能抑制による貧血、易感染性、出血傾向
・アルブミンの低下(単クローン性の免疫グロブリンであるMタンパクの上昇)
・赤血球連銭の形成による過粘稠度症候群
・ベンスジョーンズ蛋白による腎機能障害
■多発性骨髄腫の治療
日本における一般的な化学療法として以下のレジメンがある。
VAD療法(ビンクリスチン、アドリアマイシン、デキサメタゾン)
MP療法(メルファラン、プレドニゾロン)
上記の治療に抵抗性を示す場合、サリドマイドおよびその誘導体であるレナリドマイドが用いられることがある。
■サリドマイドとは
サリドマイドとは元々鎮痛及び制吐作用をもつことから妊娠女性の悪阻治療薬として用いられていた薬である。後に、サリドマイドには催奇形性が有ることが判明し、アザラシ肢症という奇形を胎児に引き起こして大きな社会問題となった。
(アザラシ肢症を引き起こすメカニズムとしては、サリドマイドがbFGF(塩基性繊維芽細胞増殖因子)が誘導する血管新生を阻害することによると言われている。)
しかし、後にサリドマイドにはTNFα合成を阻害する免疫調節性を持つことが明らかになり、らい性結節性紅斑治療で有用性が実証された。
話を戻すが、多発性骨髄腫では骨髄における微小血管密度の増加が予後不良因子になっていることが明らかになった。そこで、bFGF経由の血管新生を抑制し、また免疫調節能力を持つサリドマイドで治療することが可能なのではないかと考えられた。実際に臨床試験で高い効果が認められ、アメリカではサリドマイドとデキサメタゾンの併用療法は第一選択療法となっている。