つねぴーblog@内科専門医

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移転しました。

DICにおけるDダイマー/FDP比の意義

■DICとは

DIC(播種性血管内凝固症候群)とは何らかの基礎疾患により全身の血管内において血栓が形成されやすくなり、血小板や凝固因子が過剰に消費され、出血傾向になってしまう病態である。

 

DICでは形成された血栓を溶かすために線溶系が亢進し、凝固と線溶のサイクルが繰り返されてしまうわけであるが、凝固と線溶のどちらが優位なのかによって凝固型DICと線溶系型DICに分けることが出来る。なぜDICの分類が必要なのかというと、治療方針が変わってくるからである。

 

■ちょっと復習:フィブリンの安定化について

 

凝固カスケードの最後にはフィブリノーゲンがトロンビンによってフィブリンモノマー(フィブリンの単量体)が作られる。更に、トロンビンによって13番目の凝固因子が活性化され、フィブリンモノマー同士をしっかりと結合させる。これによりフィブリンが安定化し、簡単には切断されなくなるのである。

 

下のイラストのようにフィブリンというのは【DドメインーEドメインーDドメイン】を1つの単位として構成されている。

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■凝固優位DICと線溶優位DICでは分解産物が異なる

 

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イラスト引用:一歩一歩学ぶ生命科学

 

 

どちらのタイプのDICでも線溶系の働きによってフィブリンが分解される。しかし、凝固優位型のDICではフィブリンモノマー同士がしっかりと結合しているためにDダイマー(Dドメインが結合したもの)が産生される。上のイラストのように、フィブリンのDドメイン同士は強く架橋されているので、一度安定化フィブリンになると、線溶系が亢進しても切断されにくくなり、DドメインとEドメインの間の部分が主に切断される。一方で、線溶系が優位のDICにおいてはフィブリンが安定化する前に切断されるのでDダイマーが出来ることな無く、Dドメイン、Eドメインが作られる。

 

よってまとめると

■凝固優位型DICではDダイマーの量が多くなる。つまりDダイマー/FDP比が大きくなる。

(*FDPとはフィブリノーゲンやフィブリンが線溶系によって分解された産物の総和のことである。Dドメイン、Eドメイン、Dダイマーなどを全て包括する)

■線溶優位型DICではDダイマーはあまり作られないので、Dダイマー/FDP比が小さくなる。