つねぴーblog@内科専門医

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劇症肝炎でPT延長する理由

劇症肝炎とは肝臓が急激に機能低下を生じて、発症から8週間以内に肝性昏睡度二度以上の肝性脳症をきたし、更にプロトロンビン時間40%以下を示すものと定義される。

 

原因はB型肝炎ウィルスによるものが多い。

症状としては発熱、黄疸、浮腫などに加えて強い倦怠感などの全身症状。

血液検査では肝臓の合成能力の低下を反映してコレステロールやコリンエステラーゼなどが低下し、タイトルの通りプロトロンビン時間(PT)が40%と低下する。何故このようになるのであろうか。

 

そもそもプロトロンビン時間とは何か

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イラストは金沢大学血液内科さんより引用http://www.3nai.jp/weblog/entry/28648.html

 

凝固反応が起こるときには最終的にフィブリンが作られるわけであるが、その作られる経路には外因系と内因系の2経路が存在する。外因系とは組織因子が血管内に入り込むことにより活性化し、内因系とは血液が血液内皮細胞の下側のコラーゲン組織と接することで凝固因子12が活性化されることによりスタートする。いずれにせよ最終的に作られるものは同じであるが、フィブリンに到達するまでの経路が異なるのでそれぞれかかる時間も異なる。内因系の基準時間は30−40秒、外因系の基準時間は10−12秒である。

この際、内因系の時間をAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)と言い、外因系の時間をPT(プロトロンビン時間)という。プロトロンビン時間が延長するということは、外因系の経路のいずれかの凝固因子が欠乏しているということになる。

 

血液凝固因子の多くは肝臓で合成されているが、その中でもビタミンK依存性に働くもⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹはとりわけ大きく肝臓の機能を反映している。凝固因子Ⅱ、Ⅹは内因系・外因系共通の凝固因子、凝固因子Ⅶは外因系の凝固因子であるので、肝臓の機能が低下して凝固因子を正常に作られなくなれば、外因系の凝固経路は機能低下して、それを反映するプロトロンビン時間は当然延長するというわけである。

 

「プロトロンビン時間延長」という表現の難しいところは検査方法によって単位が異なるということである。秒で測定している場合正常値は10〜12秒前後であるので、2秒以上延長(つまり14秒以上)であれば延長と判断する。

また、劇症肝炎の基準が「プロトロンビン時間40%以下」と記載されているものも多いが、これは正常血漿を100%として生理食塩水で薄めていった希釈液を用いて検量線を作成して活性を求める方法である。つまり「秒」での測定法と「%」でも測定法は異なるので注意が必要。

 

つまり劇症肝炎の指標として

 

【プロトロンビン時間延長】

=【プロトロンビン時間が40%以下】

=【プロトロンビン時間が14秒異常】

ということもできる。