つねぴーblog@内科専門医

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バセドウ病で限局性の粘液水腫が生じる理由

バセドウ病で限局性の粘液水腫が生じる機序

 

バセドウ病とは甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、甲状腺機能亢進となる疾患である。甲状腺に対する自己抗体TSH受容体抗体(TRAb)が原因と考えられている。

頻度はあまり高くないが、粘液水腫が下肢前頸骨部や足背に多くみられ、中には像皮病様にまで膨らむ症例もある。これはいわゆるnon-pitting edema(非圧痕性浮腫)の状況であり、押しても凹みはしない。ムコ多糖というゴムのような物質が主な成分となっているからである。

 ムコ多糖は一般的には甲状腺機能低下症で生じる物質である。甲状腺機能低下症では甲状腺ホルモンがうまく産生されないために、代謝が滞りムコ多糖類という本来はあまり生じない物質が蓄積してしまう。それが皮下に沈着することによって体中に非圧痕性浮腫が生じるのである。

 ではなぜバセドウ病という甲状腺機能が亢進する疾患にもムコ多糖が出現するのであろうか。これはバセドウ病の自己抗体が何らかのメカニズムにより病変部位にある繊維芽細胞を刺激して、プロテオグリカンを大量に産生させていることが原因のようである。甲状腺機能低下症とは全く違うメカニズムによってムコ多糖が作られている点で注意が必要である。